奨学金のすすめ
お金がかかる話ばかりして不安を煽ってしまったかもしれないが、「教育にお金がかかるから子供を産むのをやめようというのは、寂しい話ですね」と前田さんは言う。
先に見たとおり、高校の授業料無償化など国や自治体も教育費の支援に本腰を入れ始めているが、いま前田さんが注目しているのは奨学金だ。
「奨学金には給付型(返済不要)と貸与型(金利がつかないものとつくものがあるが、ついても1%未満)のものがあります。日本学生支援機構のウェブサイトを見ると、貸与型を利用したとしても、その返還を支援する制度が充実しているのに驚かされます。奨学金の返還支援(代理返還)をする企業なんて、数年前には数えるほどしかなかったのに、いまや何百という企業が返還の支援に乗り出しています」
地方公共団体による返還支援も充実してきているが、背景にあるのは、人手不足と地方創生である。企業による返還支援は、当然ながらその企業への就職を前提としており、優秀な人材の確保が難しい中小企業が中心となって制度を設けている。
一方、地方公共団体による返還支援は、県や市町村が必要とする職種に就職してくれる学生を対象にしている場合が多い。介護職が不足している市町村が、介護職に一定期間就労することを条件に奨学金の返済を肩代わりするといったケースだ。
「生協が奨学金制度を始めるなど、奨学金制度はどんどん充実してきています。ただし、先ほどの例のように、奨学金には一般的に所得制限があるので、奨学金制度を利用するのであれば、事前に内容や条件をよく調べておく必要があります」
しかしわが国では、黙って進学資金を出してやるのが親の甲斐性という考え方が根強いようだが……。
「私のお客さまで、『大学は奨学金で行ってこそ勉強に身が入る』という考え方から、学費は奨学金で賄わせるというポリシーを貫いた方がいました。親がしっかりとした教育方針を持ち、小さい頃からそれを子供に言い聞かせておけば、こうした選択もありだと思います。たしかに、何でも親に払ってもらうと、授業はサボり放題、就職活動もいい加減ということになりかねません」
もう一点、前田さんが強調するのが、教育費の内訳を子供に伝えるべきだということである。
「子供の金銭感覚を養うには、実際にどれだけかかっているかを伝えたほうがいいと思います。また、そのお金は両親が働いて得たものであることもしっかり伝えたほうがいい。求めればいくらでもお金を出してもらえるという感覚を持つと、将来、子供自身が困ることになります」
お金にシビアになることも、実は教育の一環なのかもしれない。
前田菜緒さん
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子供が健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子供が寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。