2022~23年、全国各地で強盗事件を引き起こした「ルフィ事件」で、実行役となったのは「闇バイト」で集まった若者たちだった。なぜ強盗に手を染めてしまったのか。彼らの横顔を取材した週刊SPA!編集部 特殊詐欺取材班の『「ルフィ」の子どもたち』(扶桑社新書)より、23歳男性のエピソードを紹介する――。(第1回/全2回)
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「高崎で燻ってるヤツらとオレは違う」

2020年1月、群馬県高崎市にある鉄筋コンクリート打ちっ放しのホール「群馬音楽センター」で開かれた成人式には、スーツや晴れ着姿の男女が集っていた。ここは毎年、高崎市の成人式が行われる場所だ。この年も多くの新成人が集い旧交を温めていた。

大学に通う者、就職をして社会に出た者、それぞれの選択を報告し合い、そしてお互いの話に耳を傾けている。

「久しぶり、オレ歌舞伎町でホストやってんだ、今度来てよ!」

白いド派手なスーツを着た一人の男がそんな輪に加わろうとする。男は周囲の話をそこそこに聞くと、自らが勤務するホストクラブの宣伝にいとまがなかった。

ある者がすかさずツッコミを入れた。

「上野、そんなキャラじゃなかっただろ?」

男の周囲では笑いが起きた。晴れの場を乱す言動が周囲のひんしゅくを買っていたことから、咎めるつもりでの発言だったが、それを聞いた男は明らかに不機嫌になった。

「高崎で燻ってるヤツらとオレは違う。オレは歌舞伎町のホスト界で有名になる男だ」

その成人式から3年後、23歳になった上野晴生は、別の意味で世間に名を知られるようになる。