だが、施設内にある海鮮料理店「江戸辻屋」の40代店員は「うちの店で一番高い『江戸辻屋の本マグロ丼』(6980円)は、通称『インバウン丼』と呼ばれています」とあっけらかんと言う。約7000円の海鮮丼が1日に20食も出るという。一部から「ボッタクリ」などと言われる現状についても一笑に付す。

「6980円がボッタクリ? これがボッタクリ丼だと思うんだったら、別にそう思えばいい。誹謗ひぼう中傷だとも思わないし、逆にチャンスだと思っています。話題になって、お客さんに食べに来てもらって、それで『やっぱり価値があるね』と思ってもらえればそれでいい。その上で、お客さんが“ボッタクリ”だと思うのであれば、それはお客さんの価値観でしょう。今は円安だし、外国人にとってはこの値段でも安いんですよ」

江戸辻屋の海鮮親子丼=3600円
江戸辻屋の海鮮親子丼=3600円(撮影/上田耕司)

インバウン丼を頼むのは日本人

そして、6980円という値段は適正価格だと胸を張る。

「うちは愛媛県の宇和島で養殖された本マグロを、冷凍ではなく、生で仕入れて使っています。それにかかる経費や人件費、場所代などもろもろ考えてもらえればわかると思いますが、完全に適正価格ですよ」

そう店頭で話している短時間のあいだにも、「本マグロのトロ三昧」(6600円)、「海鮮親子丼」(3600円)、「本マグロとぶりの紅白丼」(3600円)などが次々と売れていく。客は6対4で日本人の方が多い。必ずしも、外国人だけが食べているわけでもないようだ。

「外国人は中国人と欧米人が半々くらいですね。特に、中国人はお金を持っているなあという実感はあります」(店員)

かつてテレビの情報番組でも取材されたというのは、「魚々屋たかぎ」。ランチメニューで一番高額なメニューはウニ、カニ、マグロなどが乗った海鮮丼「極」(7800円)。今日だけで10食ほど売れたという。

「海外のお客さんよりも、観光バスで来る日本人の方が多いですね。丼ものは金額が上がるほど種類が増えたり、ネタのグレードが上がったりするので、外国のお客さんはやはり高額なものを好む傾向が強いですね。うちの会社はこれまで居酒屋をやっていて、こうした海鮮をメインにしたお店は初めて。ネタは、大将が独自のルートで仕入れています」(女性マネジャー)