API接続が可能性を拓く

現在のところ、ChatGPTの能力は十分ではないが、今後、改善されていくだろう。とくに、ChatGPTとのAPI接続を利用した様々な教育アプリが登場するはずだ。

野口悠紀雄『ChatGPT「超」勉強法』(プレジデント社)
野口悠紀雄『ChatGPT「超」勉強法』(プレジデント社)

API接続とは、外部のアプリケーションをAPI(Application Programming Interface:ソフトウェアやプログラム、ウェブサービスの間をつなぐインターフェース)を使って連携させ、機能の拡張を図ることだ。開発者は、ChatGPTが公開しているAPIを利用することによって、自らが開発するアプリやサービスにChatGPTの機能を組み込むことができる。

これによって、世界中のすべての子供たちが家庭教師のような丁寧な指導を受けることが可能になる。その効果はきわめて大きい。

開発途上国の子供たちも、この方式で学べるようになるかもしれない。また、日本でも所得による制限がなくなる。こうした新しい教育方式に適応する社会を形成できるかどうかが、問われることになる。

また、学校教育だけでなく、社会人教育、リスキリング、高齢者の生涯学習、資格試験のための学習などにも大きな影響を与えるだろう。政府は、リスキリングに補助金を出すのではなく、むしろ、こういったアプリを無料で利用できるようにすべきだ。

ChatGPTの時代に人間の教師は生き残れるか

ChatGPTが勉強の在り方を大きく変える時代に、人間の教師の役割は残るだろうか? 人間の教師は依然として必要か?

この答えは、教科によってかなり違う。

まず外国語については、『ChatGPT「超」勉強法』で詳しく述べるが、基本的にはChatGPTのほうが優れている。だから、人間の教師の必要性は大きく減少するだろう。

国語についても似たことがいえる。ChatGPTは論理の進め方を誤ることがある。だから、正しい論理を教えるのは、人間の教師の役割だ。

数学については、人間の教師の役割は大きい。したがって、学校での教育も、これまでとほとんど変わらない形で続くだろう。なぜなら、数学については、「シンボル・グラウンディング問題(*)」のために、ChatGPTの能力に大きな疑問があるからだ。

*人間やAIがシンボル(言葉、数字、画像など)を実世界の具体的な対象や概念にどのように結びつけて理解しているか、という問題のこと。

理科・社会科については、ハルシネーション(幻覚)(*)に注意しつつ、教師の指導のもとにChatGPTを活用することができる。

*AIが間違った回答をすること。