「リアル」をなくせば大きな経費削減に

一般的に、「①リアル」は本社などで実施することが多いので、本社勤務の人にとっての負担は、(場所は同じなので)「時間」だけです。

しかし、支社勤務の人は①に参加するために移動する必要があります。また育児や介護など時間の制約がある人にとっては①への参加はとても厳しくて、②でさえ通常勤務時間外に実施されると参加が難しいでしょう。

時間や場所の制約がある人に対しては③>②>①の順で優しいともいえます。

前述のように私が担当していたスーモカウンターは全国に拠点がありました。また育児や介護についている人も少なくありませんでした。

したがって、「③テキスト」でできることは、限りなく非同期(時間や場所を問わない)でできる「③テキスト」で実施する。

そしてその次に、「②オンライン」でできることはできる限りオンラインで実施し、どうしても「①リアル」でないとできないことだけをリアルで実施するようにしたのです。

つまり、①か②か③ではなく、①②③の強みを理解したうえで、①と②と③を組み合わせて実施したのです。

その中で、当時悩んだのは「①リアル」でないとできないことが本当にあるのかという点でした。私たちは当時、リクルート内で最も「③テキスト」を活用した組織でした。さらにオンライン会議システムも活用しまくっていました。

顧客センターで対応するビジネスパーソン
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

すると、確かに「①リアル」でないとできないことはあるのですが、リアルでなくてもあまり影響はなかったのです。

コストだけを考えると「①リアル」をなくせば大きな経費削減になります。

ただし雑談の中にイノベーションのタネがある

ところが、店舗ビジネスの大先輩であるコンビニエンスストアを研究したところ、改めて「①リアル」はやるべきだと考え直しました。

それは、他ブランドよりも10万円以上日商が多いトップシェアのブランドだけ、毎月スーパーバイザーを全国から集めて、戦略や方針を徹底させていたのです。これこそリアルでないとできないことがある証拠だと考えて参考にしました。

私たちの場合、戦略などを変更する際の徹底・浸透、つまり戦略のニュアンスを共有することはリアルの方がよいかもしれないという感覚を持っていました。それを実際に実施するためのロールプレイングなどは、リアルでやる方が浸透・定着に役立ちました。

もちろん、それらはビデオなどでも代替できますし、オンライン会議でもかなりの部分は代替できますが、リアルの方が浸透度・定着度が高かったのです。

また、間違いなくリアルでないとできないことは、「偶然の出会い」です。勤務地が異なる従業員が休憩時間や会議後の飲み会などで話した雑談の中にイノベーションのタネがあったりするのです。いわゆるセレンディピティ(偶然から予想外の発見をすること)です。

これは設計していたわけではありませんが、かなりの頻度でこのセレンディピティが起きるのです。