コミュニケーションの欠如や誤解、嫉妬心がきっかけになる

以上、産業医面談でハラスメントかと思ってしまったけれど、調べた結果、当事者だけがヒートアップしている場合や、本当にハラスメントなのかと感じてしまう症例についてお話しさせていただきました。

ニュースに上がるような、殴る蹴るなどの暴力や性被害とも言えるようなハラスメントは私のクライエントでは遭遇したことはありません。実際は、今回のようにハラスメントとは認定されなかったハラスメント訴えケースが中心です。しかし、中には本当にひどいケースもあり、調査の結果ハラスメントと認められるものもわずかながらあります。

ハラスメントと認定されなかったケースたちですが、いずれも、コミュニケーションの欠如、ささいな誤解やジェラシーがきっかけとなっていることが多いと思います。時には、全く関係ないことでいっぱいいっぱいな精神状態の社員が、たまたまその(加害者とされる)同僚をはけ口としてしまったように思えるものもあります。

「合わない人」ともやっていくのが職場

職場におけるストレスの原因は、人間関係がほとんどの調査でトップ3に入っています(他は、仕事の量・質、責任など)。職場の人間関係に高すぎる期待を持たず、現実的に対処対応できれば職場のストレスの大きい部分は対処可能なのです。

学生時代は気の合わない人とは接する時間を少なくすることができました。しかし、職場は学校ではありません。仲良し友達に会いにいくところではありません。職場は、仕事という共通目的を達成するための集団です。合わない人とも、上手に仕事仲間としてやっていくことが求められます。

人間の形をした紙
写真=iStock.com/patpitchaya
※写真はイメージです

職場の人間関係のゴタゴタを自分が起こさないためには、自分が心身ともに“健康”であること。同じく、巻き込まれないためには、“職場だ”という意識を常に持って行動することです。また、身体的接触は誤解のもとになりかねないので行わないことも大切です。

合わない人とやっていくために、時には上司や人事を巻き込み、相手とのルールづくりをする必要があることもあります。また、職場でためてしまったストレスを発散するためには、積極的に趣味や気分転換をして過ごすことも大切です。

仮に何か起こってしまった場合は、産業医としては、喧嘩騒動の後にはお互いの理解を深め、より良い関係を築くことができるようになってほしいものです。しかし、漫画や青春ドラマの世界とは違い、私の経験では両者とも、人事から要注意人物としてしばらく見られてしまうようです。

ぜひ皆様、職場の人間関係のゴタゴタには、お気をつけくださいませ。

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