そもそも身体的接触なしでコミュニケーションをすればいい

本件も最終的には会社はハラスメントとは認定しませんでした。しかし、上司や周囲がセクハラと認識はしなくても、Bさんはその身体的接触をネガティブに感じたことにより、上司は誤解を招く行為を今後はしないよう注意を受けました。その後両者は同じ部署で働いています。上司は誰の肩も叩かなくなりました。

ヒアリングの中で人事が聞いたことを後で私にいろいろ教えてくれました。上司の奥さんは数年前に部署に配属された人でBさんの後輩に当たること。この結婚を素直には喜べないというBさんの愚痴を複数人の同僚が聞いたことがあること。また、Bさん自身は最近婚活をするもうまくいっていないこと。購入したマンションが耐震性偽造建築の物件と判明したことなどなど。

私の推測になりますが、当初は気にならなかった肩ポンポンが、Bさんの心の状態が変わったために、気持ち悪いと感じるようになってしまったのだと思われました。上司が戸惑ったことは想像にやすいですが、そもそも身体的接触なしで部下とコミュニケーションをすればよかっただけの話だとも思います。

会議
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「そのふたり、犬猿の仲で有名です」

そのほかにもパターンとしては、Cさんが職場の特定の人(Dさん)に対する人間関係ストレスを訴えて産業医面談に来て、翌月か翌々月に今度はDさんが同じように職場の特定の人(Cさん)に対する人間関係ストレスを訴えて産業医面談に来るという類のものがあります。共通しているのはどちらも人事部に、“人間関係ストレスがあるので対処してほしい”と伝えてほしいということです。

その場合、産業医としては「職場の人間関係が心理的負荷になっているようで、人事からもヒアリングをお願いします」と伝えます。が、担当人事からは、そのふたり、犬猿の仲で有名です、上司や同僚たちに言わせるとどっちもどっちでした、という内容をよく聞かされました。

そして多くの場合、上司や人事の気持ちとしては、職場だからこそ、(けんかでなく)仕事をしてほしいということです。