他県の警備会社に3倍の単価で依頼

道路工事などのインフラ工事には警備が必須であり、C社はそれを担っているのだが、地域の業界全体でなり手が急激に減少している。警備の仕事は「立ち仕事=つらい仕事」というイメージがあり、人材難に拍車がかかっているのかもしれない。C社はそんななか、労働環境改善などさまざまな手を打っている会社だが、それでもこれまで当たり前にできていたことができなくなってきているという。

古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)
古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)

「先日、市内のすべての警備会社が人手不足で警備を断らざるをえなかった工事現場がありました。もちろん警備は工事を進めるうえで必須ですから、この現場には県外から警備会社が来ていました。ただ、建設会社はその警備会社に対して通常の3倍の単価に加えて、警備員の交通費や宿泊費を支払っていたそうです。それくらい、人手が足りなくなってきているんです」

地域のすべての警備会社が人手不足で地元の仕事を断り、それに対して県外の会社に頼まざるをえない状況。もちろん今はまだ警備の単価が数倍になっても、その建設会社の経営努力によりしっかりと業務を遂行できたようだが、もしさらに人手不足が加速し、より遠くの会社に頼まざるをえなくなった場合、その工事は安全に遂行できるのだろうか。

地方の現場ではすでに、労働供給制約によって当たり前が当たり前でなくなりつつある。

「いつになったら人手不足は解決できるのか」――。

多くの中小企業の声だ。伝統ある会社、技術力のある会社、社会にとって必要なモノやサービスを提供している会社でも、状況は変わらない。人手が確保できず、自分たちがこれまで当たり前にできていたことができなくなる、という不安と戦っている。