日本で1980年代にテレビ放送された特撮ヒーロードラマが、ブラジルで根強い人気を博している。日本のコンテンツのどこに引かれているのか。サンパウロ在住フォトグラファー兼ライターの仁尾帯刀さんが取材した――。(前編/全2回)

特撮テレビドラマに熱中したマンシェッチ世代

1980年代に日本で制作・放送された特撮テレビドラマが、南米ブラジルでいまでも人気を博していることをご存じだろうか。

かつてブラジルで視聴率15%に達した「巨獣特捜ジャスピオン」のワンシーン
©東映/SATO CO., LTD.
かつてブラジルで視聴率15%に達した『巨獣特捜ジャスピオン』のワンシーン

ブラジルのテレビ用語に「マンシェッチ世代」という言葉がある。マンシェッチとは1983年に創業し、経営難によりわずか17年で売却されたテレビ局の名だ。マンシェッチは、日本製の特撮テレビドラマを放送することで、大手局をしのぐ視聴率をたたき出し、旋風を巻き起こした。

巨獣特捜ジャスピオン』『電撃戦隊チェンジマン』(いずれも日本放送は1985~86年)あるいは『世界忍者戦ジライヤ』(同88~89年)などの作品は、絶頂期にはほぼ毎日3回放送された。さらに最終回が終わると、翌日から再び同じ作品を繰り返し放送するヘビーローテーション。その結果、当時の子供たちの心をわしづかみにした。彼らこそが「マンシェッチ世代」だ。

そのマンシェッチ世代も今や30~40代。熱狂はすっかり過去のものかと思いきや、パンデミック中の2020年に現在の大手放送局が『巨獣特捜ジャスピオン』などの過去の人気作から3シリーズを地上波放送すると、同局の全番組の中で最高視聴率2.2%を記録するなど、特撮ヒーロー熱は冷めていない。

受け身の視聴者では飽き足らず、かつての特撮ヒーローの魅力を今に伝える熱いファンも少なくない。コスプレイヤー、歌手兼出版人、ユーチューバーと立場の異なる3人にそれぞれの思いを聞いた。