貧富の差が激しい国でシンプルな「敵に勝つ」が刺さった
今、ブラジルで日本製特撮ヒーローに絶え間ない情熱を注ぐのは、大方30~40代のマンシェッチ世代の男性で、ここに紹介した愛好家たちもそろって40代だ。日本の特撮テレビドラマはなぜブラジルの子供たちの心をとらえたのか。
ユーチューバーのダニーロ・モードロさんは「当時子供番組といったら、アメリカの伝統的なアニメーションしかなかったんです」という。
「そんなときに生身の人間がヒーローに変身する映像に子供たちは夢中になったんです。また特撮ヒーローのおもちゃや文房具など関連グッズにも子供たちは虜になりました」
補足すると、ブラジルでは60年代、70年代に『ナショナルキッド』や『ウルトラマン』などが地上波放送されたが、特撮テレビドラマには放送の空白期があったのだ。
コスプレイヤーのダニー・ツルギさんは近未来的な映像の衝撃が今でも忘れられないという。「ヒーローが操縦する宇宙船がロボットに変形するアイデアがとても斬新だったんです」
歌手のヒカルド・クルーズさんは、ブラジルの社会構造も人気の背景にあったと語る。「ブラジルの現実は貧富の差が激しくて厳しいんですよ。そんな社会にあって特撮テレビドラマはエピソードの内容もテーマ曲も、訴えるメッセージが『敵に勝つ』というわかりやすく強いものなので、たくさんの子供の心に刺さったんだと思います」
(始まりは日本から持ち帰った18本のビデオだった...ブラジルで「特撮ヒーローブーム」を作った2人の日系人へ続く)