性能、デザイン、コスト…仕事選びと家づくりは似ている

鉄則その1
全てを満たす家は、存在しない→何を優先して、何を手放すか

いきなり厳しい話になってしまいますが、タイトルの通り、「すべてを満たす家」は幻の存在です。

これは、「仕事選び」と似ています。給料、仕事内容、勤務地、勤務時間、人間関係……。すべて理想通りの仕事が見つかれば最高ですが、仮に見つかっても、その職場に選ばれるというハードルは限りなく高いかもしれません。

仕事選びにあたり、多くの人は「完璧」を求めず、優先順位をつけて検討するのではないでしょうか。

家づくりでも、その感覚を持つことが大切です。完璧を求めずにどうやって幸せになれる家を建てるのか。

建築にあたり、三角形といえる要素が、「性能」「デザイン」「コスト」です。そのどれを優先し、どこをある程度譲るか。バランスを見ながら、最適解を探していくのが、いい家づくりの秘訣ひけつです。

あらゆる要望を満たす完璧な家という幻を追いかけるより、「自分にぴったりの、居心地のいい家」を建てる。それが本書の目標です。

幸せな家づくりのゴールデンルート

鉄則その2
「ほしい家」より、「ほしい暮らし」→どんな生活をしたいか、を考える

「どんな家をつくりたいですか?」。設計者からそう聞かれた際、多くの人は、「間取り」や「部屋数」を答えるでしょう。3LDKがいい、吹き抜けがほしい、子ども部屋は2つ、書斎は、お風呂は……。

確かに具体的な要件を出すのも必要ですが、いきなりそこからスタートすると、家が建ったあとに、使わない部屋や空間が出てきがち。生活に必要のない不幸な空間は、家を「実際にどのように使うか」が想定できていないことで生まれるものです。

まず考えるべきこと。それは「どんなふうに暮らしていきたいか」です。

趣味を楽しみたい、家族団らんを大切にしたい、家事を快適に行いたい、庭をのんびり眺めたい、ペットとのびのび過ごしたい……。自分がその家でどんな暮らしをしたいのかを事前にイメージしておき、それに合わせて間取りや部屋数、デザイン、外観といった要素を組み立てていくのが、幸せな家づくりのゴールデンルートです。

ほしい暮らしこそ、家づくりの設計図なのです。