2023年の「田代ダム案」と全く同じ構図
昨年1年間、リニアの水問題解決のカギを握る田代ダム案が何度も議論の中心となり、静岡県とJR東海との間でいたちごっこが繰り返されたのも全く同じ構図である。
2022年4月、JR東海は東京電力リニューアブルパワー(東電RP)の内諾を得た上で田代ダム案を提案した。東電RPは、田代ダム案が河川法の「水利権」に絡まないことを県はじめ利水者に理解してもらう条件をJR東海に託した。
しかし、提案直後から、川勝知事は「JR東海は関係のない水利権に首を突っ込んでいる」「突然、水利権の約束を破るのはアホなこと、乱暴なこと」などと強く反発した。
JR東海は田代ダム案が水利権と無関係なことを詳しく説明し、国交省は、田代ダム案が水利権に関わる河川法に触れないとする政府見解を明示した。
当初、川勝知事が単なる“勘違い”をしているだけだと思われた。森貴志副知事ら事務方がちゃんと説明すれば、川勝知事の誤解も解けると見られた。
ところが、昨年1月4日の新年会見でも、川勝知事は田代ダム案をやり玉に挙げて、田代ダム案の水利権問題を持ち出した。
結局、昨年11月になっても田代ダム案を認めない姿勢を崩さなかった。
静岡県庁は「機能崩壊」寸前
賢明な川勝知事が河川法の水利権を理解していないはずがない。
田代ダム案を認めたくないための1つの「嘘」として、非常にわかりにくい水利権を使ったとしか考えられない。
一方、渡邉参事は国交省の政府見解に言い掛かりをつけるなど、川勝知事と同じ姿勢を崩さなかった。つまり、事実関係を無視してでも、執行機関である知事の意向に従ったのだろう。
JR東海は1月24日、静岡市で記者会見を開いて、報道各社に正確に事実を伝えるよう要請した。川勝知事のデタラメ発言を打ち消すことに躍起である。
今後、同じような会見が繰り返されるかもしれない。
静岡県庁のリニア担当職員たちが、川勝知事の「嘘」に率先して加担したままでいいのだろうか。静岡県庁は「機能不全」状態ではなく、「機能崩壊」寸前である。