声かけの「基本型」をもつ

ときどき見かける人、職場やサークルで会う人などに対しては、会うたびに「なにを話そう」と考えるのではなく、「基本型」を決めておくとラク。いざとなったときに焦らず、スムーズに言葉が出てきたり、流れが生まれたりします。

その基本型とは、先の記事でも書いた通り、「あいさつ+ひと言」。たとえば……、

「おはようございます。だんだん涼しくなってきましたね」
「おつかれさまです。これからお昼の休憩ですか?」
「こんばんは。今日は満月みたいですよ」

など、なんでもいいのです。

最後の語尾を「~ですね」(同調)、「~ですか?」(質問)、「~ですよ」(伝達)などにして、相手に問いかけるように言うと、相手も話に乗っかりやすい。

話し好きな人なら「ほんと、昨夜は寒くて掛け布団を出しましたよ」「はい。近くのカフェに行ってきます」「満月、見えるんですか?」というように話が続いていきます。

「~です」「~でした」で終わると、話し下手な人はリアクションに困るでしょう。

話の中身はなくても、ともかく自分から話しかけて、「時間は短く、回数は多く」することが大事。声をかけられるだけで相手は嬉しいのですから。

「単純接触効果」という心理学用語があります。繰り返し見たり、会ったり、接触する回数が増えるほど、警戒心が薄れていき、親しみや好感をもつという効果。「あいさつ+ひと言」を繰り返していると、リラックスしてふと話が弾むことがあるのです。

注意点は、けっして無理をしないこと。気分が乗らないのに話そうとすると互いにストレス。話しにくい相手には、あいさつだけにとどめ、リアクションが薄い相手は、ひと言二言で終了……と最小限のエネルギーで。ボクシングで軽いジャブを打ちながら距離をとるように、短い会話を繰り返していくと、打ち込める場面も出てくるのです。

少し話してまた今度……と気楽に、長期戦で構えたほうがうまくいくはずです。

“共感”できることを探せば、話題に事欠かない

スポーツジムに行くと、女性たちは“共感”で雑談をつくっていると感じます。

「これだけ雨が続くと、洗濯物がなかなか乾かないですよね」
「行くのが面倒だと思うんですけど、来たら来たで楽しくて」
「今日のホットヨガ、いつもより温度が低かったと思いません?」

というように。「自分が感じていて、きっと相手も感じているであろう」ということを会話の入り口や、話のつなぎにするのです。

有川真由美『どこへ行っても『顔見知り』ができる人、できない人』(PHP研究所)
有川真由美『どこへ行っても『顔見知り』ができる人、できない人』(PHP研究所)

互いに名前も年齢も知らないけれど、会えば気さくに話す「顔見知り」になっているのは、こうした“共感”によるコミュニケーションを重ねているからでしょう。

もし、その場に雑談が一切なかったら、「見知らぬ人」と認識された者同士、殺伐として心地悪い空間になってしまうでしょう。ほんの少し会話をするだけで、場は和らぐのです。とくに“共感”は人と人を結びつける鍵。一気に親しみがわいて、「見知らぬ人」から「顔見知り」に昇格するのです。

どんな人でも、なにかしら共感することはあるはずです。簡単なことでいえば、「体を動かすと気持ちいいですよね」「白髪をいつまで染めようか悩みどころです」など、健康や美容のこと。家事、育児、仕事、地域……共通項から見えてくるはず。

じつは、我が身に起こる「喜・楽」より「怒・哀」の共感のほうが、心に響くといいます。

「問い合わせ電話の長い自動応答ってイラッとしません?」「お会計のあとにいつも、クーポン券が出てくるんですよね」など、深刻にならない程度の「怒・哀」には、心のうちを見せてくれた“小さなぶっちゃけ感”があるからかもしれません。

女性は“共感”、男性は“目的”によって人間関係を築くといいますが、共感力の高い男性は間違いなくモテます。共感できない場面でも「そう感じるんですね」と“理解”しようとする姿勢が見えたら、それでコミュニケーションは成立。

性別や年齢、立場を超えて共感を見つける人のまわりには、自然に顔見知りが増えていくのです。

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