無印良品が「生産者の名前」を記す理由
また、米をつくったり野菜をつくったり、豚や牛を飼ったり、船で魚を取りに出たりという人は今、本当にいなくなりました。みんなこうした仕事から離れていく中で、世界の人口が100億人に向かっているというときに、誰が日本人のための食べ物をつくってくれるのでしょうか。
だから、良品計画では生鮮食品の取り扱いを始めています。今の私たちの使命は、生産者と消費者をつなげること。生産者が売場に立ち、「あんたの大根、うまかったよ」と言われるような交流があって、「じゃあ、もっとうまくしよう」と言いながら、大根の収穫期には消費者が畑に行って大根を一緒に掘って、それを使った大根鍋を食べる、という関係をつくることが今の小売業の役割、使命なのではないかと私は考えています。
そうしないと、作り手がいなくなってしまいますから。われわれは、そういう方向で仕事をしていきたい。それは、売る立場の発想ではなくて、結果的にお客さまがどう思うかということでもなくて、「売る側が、お客さまの気持ちで考えることが重要だ」ということです。
それこそが、倉本長治さんの「店は客のためにある」という精神ではないでしょうか。