今回の論文は、考察で「赤坂御用地で確認されたトンボは止水性の環境(池など)に生息するものがほぼすべてであり、流水性の種に乏しいことは周囲の緑地のトンボ相と同じである。そのため、流水性の種の飛翔分散による外部からの侵入が限られる」と指摘したり、「今回、新たに発見された種について、国内での分布拡大、一過性の飛来、赤坂御用地の環境変化など種ごとに要因を検討」したりするなど、手厚い議論が展開されています。

率直に言って「高校生が初めて書いた論文にしては立派すぎる」感はあるのですが、悠仁さまが共同研究者とともに討論をした結果を文章に落とし込んだとすれば、不思議ではありません。

熱意のある高校生ならば、適切な指導を受ければ適当な学術出版物に論文を書くことは可能だとして、「普通の高校生であれば、論文執筆・掲載の機会は得られない」という批判もあります。

確かに最近は、地域の高大連携やオープンキャンパスでの研究体験などが増えましたが、成果を学術論文としてまとめて発表する機会まで得られる高校生はほとんどいません。市民科学分野などで、意欲のある非専門家はデータの収集だけでなく、分析や論文執筆にも貢献できるような訓練を積める仕組み作りも必要かもしれません。

「トンボ愛」は本物

今回の悠仁さまのトンボのデータは、かつて国立科学博物館の研究者が同じ場所で調査をしており、空白期間を埋めるような貴重なものだったので、共同研究者らもとりわけ「この調査結果を是非とも世に出したい」と考えたのでしょう。

皇族だから普通の高校生には入れない特殊な場所のデータを集められた、専門家とのコネクションを結びやすい立場だったことに、不公平さを感じる人はいるかもしれませんが、悠仁さまがトンボに興味を持ってくれたからこそ、通常では調査できないフィールドでの生態が明らかになったと言え、そこに価値があります。

悠仁さまへの「不公平さ」は、恵まれた研究環境を羨む人よりも、「この学術論文を使えば、難関大学の推薦入試枠に合格できるだろう。そのために今の時期に論文掲載を狙ったのではないか」と受験の切り札と考える人が、いっそう感じているようです。

現時点では志望校は確定していませんし、受験方法は一般入試なのか推薦入試なのかも分かりません。さらに、悠仁さまがトンボの研究を今後も続けたいとしたら、すでに助言をもらったり共同研究したりできる研究者を得ているのですから、どの大学に入ったとしても幸せなトンボ研究ライフは送れそうです。

トンボ論文の掲載と同じ頃、修学旅行に参加した悠仁さまは、旅行のしおりに「昼に時間があればトンボ見たい」とコメントされていたと言います。「トンボ愛」は受験の成果作りのためではない「本物」であることがうかがえるからこそ、周囲も国民も先回りし過ぎず、見守りたいですね。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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