その鍵が「ブランド」だ。ブランドは独占的で他社は使えない。競争的な市場でもブランドが確立できれば差別化して価格を上げることができる。

養鶏農家にブランドはそぐわないと考える人もいるだろう。しかしアメリカでは、ブランド戦略で成功した起業家も実際にいる。

1970年代、フランク・パーデューという養鶏農家の農夫が、鶏肉に「フランク・パーデューズ・チキン」と名づけて、ほかより少しだけ高い価格で売り出した。同時にパーデュー氏自らが出演するテレビCMも流した。味はほかのチキンとさほど変わらないが、これが大当たり。パーデュー・チキンは最大手に成長した。鶏肉に名前をつけてテレビで宣伝することなど考えられない時代。コストや品質が変わらない商品も、ブランド名を冠しプロモーションすることで競争力をつけ、売り上げを伸ばすことができた。

ユニクロの躍進も、柳井正社長のブランド戦略があったからこそと考えられる。80年代、カジュアルウエア業界は中国製衣料の流入で価格競争が激しくなっていた。柳井氏がユニクロ1号店を出店したのは、その最中である84年。当時の店名は「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」。つまり店名そのものに、独自のSPA(製造小売業)戦略に基づく衣料を提供するという、現在に至る差別化コンセプトを内包していたわけだ。

手ごろな価格でファッショナブルな商品を提供する――。これがユニクロのブランドコンセプト。ユニクロは価格競争を促す側で成長したが、ブランド確立後は低価格に依存しない体制を築き事業を展開している。

他社と差別化が難しい状況の中で、ブランドをいかに確立するか。それが利益を確保し続けるカギである。

(構成=村上 敬 撮影=浮田輝雄)
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