立憲は11月に発表した新しい経済政策に消費減税を明記せず「現行の軽減税率制度を廃止し、給付付き税額控除を導入する」と記述するにとどめた。立憲の姿勢に市民連合が配慮した形で共通政策がまとめられ、他党もこの政策に「乗る」形となった。

立憲はこれまで、共産党との連携を「立憲共産党」と罵倒されたり、他の野党との間に「消費減税」でくさびを打たれたりして、立ち位置に右往左往する局面もあった。しかしこの政策合意によって、どうやらこれらの「呪いの言葉」を乗り越えて、2021年当時の状態まで野党の連携の形を戻すことができたようだ(この経緯については、昨年12月31日公開の記事「政権交代の兆しが見えてきた…『自公政権はイヤ』の受け皿になれなかった野党勢力が変えるべきこと」をお読みいただきたい)。

維新と国民民主を野党陣営に引き戻した

驚いたのは、立憲がさらに、維新や国民民主をも野党陣営に「引き戻す」ことにも成功したことだ。

維新は21年衆院選で議席を伸ばして以降、立憲と野党第1党の立場を争っているし、国民民主は20年、立憲とのいわゆる「合流」を拒んだ議員で構成されており、玉木雄一郎代表は立憲の「逆張り」を狙うかのような言動を繰り返している。実際、臨時国会で成立した政府の2023年度補正予算案に、両党は野党でありながら賛成した。

二つの「ゆ党」の存在は、野党第1党の立憲に「指導力不足」というネガティブな評価を植え付ける要因となっており、立憲にとってはこれも頭の痛い問題だった。

ところが、自民党派閥の裏金問題が、この状況を劇的に変えた。

官房長官不信任案、内閣不信任案で見えた「大きな構え」

国民の関心が「立憲は内閣不信任決議案を出すのか」に向かうなか、立憲は松野博一官房長官(当時)への不信任案提出という「くせ球」を投げた(12月11日)。裏金疑惑への批判の高まりを受け、両党は松野氏の不信任案に賛成。それを見越したかのように、立憲は満を持して内閣不信任案を提出した。

松野氏の不信任案に賛成した維新と国民民主は、内閣不信任案にも賛成せざるを得なくなった。「立憲が提出した内閣不信任案に全野党が賛成する」という「大きな構え」が出来上がった。

立憲は、同じ国会で政府の補正予算案に賛成した二つの「ゆ党」を、最後に野党陣営に引き戻すことに成功したと言える。これらの動きを受け、報道各社の年末の世論調査では、自民党の支持率が急落する一方、立憲の支持率は目に見えて上昇した。野党全体に対する好評価の果実を、第1党の立憲が多く受け取った形だ。