2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。くらし・住まい部門の第4位は――。(初公開日:2023年9月15日)
「近くで家を建てている」という業者が「お宅の屋根が壊れています。ちょっと見てみましょうか」と訪問してくることがある。ファイナンシャルプランナーの髙橋庸夫さんは「リフォームトラブルの中でも屋根工事のトラブル事例の割合は多く、詐欺まがいの悪徳業者の存在が問題視されている。彼らをやすやすと屋根に上げてはいけない」という――。
屋根にかけられたはしご
写真=iStock.com/Willowpix
※写真はイメージです

相談件数は増加傾向

住宅のリフォーム工事に関するトラブルは大きく2タイプあります。突然、訪問してきてリフォーム工事の契約を迫る「訪問販売」のケースと、点検業者を名乗り「早急に工事をしないと危険」などと危機感を煽ることで契約を迫る「点検商法」のケースです。

国民生活センターや全国の消費生活センターに寄せられた相談件数の推移は以下の通りです。

【図表1】住宅リフォームの相談件数推移
独立行政法人国民生活センター PIO-NETに登録された相談件数の推移より筆者作成

図表1の通り、相談件数は年々増加しており、2022年度には訪問販売によるリフォーム工事の相談件数が年間1万件を超えています。

さらに、手口が多種多様化、巧妙化している

訪問販売の場合は、突然自宅を訪問し、今すぐ修理しないと大変なことになるなどと不安や危機感を煽り、その場で契約を結ばせてしまうスタイルがほとんどです。国民生活センターからもさまざまな事例が情報提供されており、消費者に注意喚起されています。

最近の事例

・「近所で工事をしているのであいさつに来た」と飛び込みで訪問してきた業者に、屋根の瓦が傾いていて隣の家に落ちそうなので、ついでに千円で直してあげると言われたため、修理をお願いした。作業が終わると屋根全体の修理が必要とのことで、このままにしておくと雨漏りすると言われ、約20万円の修繕工事をその場で契約した。

・「台風による被害調査をドローンで行っている」との業者から調査写真を見せられ、瓦が割れているので修繕工事が必要と言われた。台風による被害なので、損害保険の保険金の申請を業者がサポートすると言われ、申請代行の契約を結んだ。契約書を確認してみると、「損害保険金の35%の手数料を業者に支払う」と記載されていることに後で気づいた。

・「近所で別の工事をしている」と訪問してきた業者から、「お宅の屋根がめくれているのが見えたので、屋根に上って点検させてほしい」と言われ、お願いした。点検後、屋根が浮いている写真を見せられ、そのままにしておけないので約30万円の修繕工事の契約をその場で結んだ。

訪問販売によるリフォーム工事を行う悪徳業者の営業マンは、訪問時のセールストークなどをマニュアル化している場合もあるそうです。偶然を装って「近所で工事している」、無料でできることをアピールするため「火災保険を使える」、とにかく屋根に上って点検したいため「点検調査は無料」、その場で契約を迫るため「今ならモニター価格、キャンペーン価格」などが常套句となっています。

極めて悪質な業者の場合は、屋根に上って点検している際に、点検箇所をわざと壊した上で写真を撮り、早急な修繕工事の必要性を煽るケースもあるそうです。

※相談事例の出典=独立行政法人国民生活センター「消費生活相談データベース