減点法ではなく加点法で社員を見る

――人事では「社員を調子に乗せること」を大事にされているとのことですが、そのために鳥越社長がやっていることを教えてください。

【鳥越】これが効果的だ、と意識してやっているわけじゃないですけれども、本でも触れていただきましたが、「できていないこと」「やっていないこと」ではなくて、「できていること」「やっていること」をまず認める、というのはありますね。「でもね」と続けることもあるんですけど(笑)。

それと、何でもそうですけれども、自分が現場に立つことが大事だと思っています。「トップが現場に出るとマイクロマネジメントになる」という考え方もある一方で、社員の評価をしっかりするという面を考えるなら、やっぱり現場に立つべきなのかなと。

小さいころに『機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ)』で、マシュマー・セロというキャラクターがいまして、巡洋艦の艦長なんですが、なにかというとすぐ自分がモビルスーツで出撃しちゃうんです。で、第何話かもう分からないんですけれど、次回予告でZZの主役、ジュドー・アーシタの声で、「指揮官は座っていればいいのに、どんどん出てくるのはどうなんだ」みたいなツッコミが入ったんです。そうか、自分で手を出しちゃだめなんだな、とすごく記憶に残っているんですが、今、自分でそのマシュマー・セロ的なことをやっているわけですよ(笑)。

現場の最前線の風を感じる

【鳥越】やっているんですけど、彼のように自分で最前線で戦うというよりは、前線にいる巡洋艦なら、巡洋艦に乗っかって、みんなの話を聞きながら様子を見て、肌感覚で状況を捉えようとしている感じなんです。現場の情報を数字で見る、それも大事なんですけれど、それだけじゃなくて、数字につながる具体的な人の動きも見る。いちいち指示はしないけれど、どういう状況なのかは感じ取る。

自分で戦わなくても、最前線の風を感じるというのは、経営の判断をスピード感を持ってやるためには一番大事でしょうし、何よりもやっぱり士気が上がる。これは「調子に乗ってもらう」ためにも、重要かなという。現場に行って、やっていることをちゃんと理解していることを見せて、その働きの意義を感じているよ、という姿勢を示すことですね。

逆に、何も分からないのにやみくもに現場に行く、というのが一番ダメです。「何しに来たんだ」と社員は思うし、「せっかく行ったのにみんな冷たい」と社長は思う、みたいな。

相模屋食料の赤城工場 外観
写真提供=相模屋食料
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