「数値目標」を立てると伸びは止まる
【鳥越】おかげさまで今期、売上高400億円超えはほぼ確実になりましたが、これも別に目標として社内を叱咤して、というものではないんです。「今期の売上高は」と取材されれば、だいたいこのくらいですかね、とお話しはしますけれど、いわゆるコミットメントみたいなものではない。「おっと! 気づいたら400億、いっちゃってるじゃない!」という感じです。
これを例えば「今期の目標は売上高380億円」に設定していたら、そこで伸びが止まって、400億円まで行かなかったかもしれませんよね。「目標達成できるぎりぎりのところまで努力をしよう」と、人は考えがちじゃないですか。
だから数値を目標にすることには、いいところと悪いところがあると思います。ストレッチしてそこまでは頑張れる、というのはいいところですが、それ以上のところにいくというのは難しい。「予算」があると「予算以上」って、考えなくなりますよね。そうなると、新しい商品が出なくなったり、新しい客先が開拓できなくなったり、といった悪影響が出る。
「がんがんいこうぜ」には数値目標は邪魔
【鳥越】もちろん、経営が安定した大企業さんであれば、数字を見るというのはすごく大事なことだと思いますので、予算を積み上げ方式でやる意味はあると思うんですけれども、私たちのような小さい会社では、「どんな商品が今年出るか分からない、でも売れる商品を出せる自信はある。どれだけ早くてもいいから、頑張って出そう、出たら思いっきり売ろう」というテンションが大事なんですね。本音を言えば数値目標を立てようもないですし、立てたところであんまり意味がないという。
例えて言うと、あれです。「ドラゴンクエスト」の作戦コマンドの「がんがんいこうぜ」(後先を気にせず可能な限り強力な攻撃を行う)。あのやり方でいくには、数値目標は邪魔じゃないかなと。「いのちだいじに」「じゅもんせつやく」だったら別ですが、我々のような企業が生き延びるには、勝てるところで全力で勝ちに行くしかない、と思っていますので。