不況の影響で、再び「就職氷河期」に突入した就職戦線は、厳しさを増している。企業各社は採用人数を絞り込んだため、大学の厳しい選別が行われている。有力人事マンが採用の舞台裏を語り尽くす。

【サービス】どこの会社でも面接で必ず聞くのは、大学4年間で、何を目標とし、どういう手段を使って何をやり遂げてきたのか、また失敗したら、どうやって克服してきたかだ。学生時代はサークル、ゼミの活動でも何でもいいが、能動的にあらゆることにチャレンジした体験なり、経験を積んでほしい。

【建設】今の学生の典型的な行動パターンを僕らは「三角形」と呼んでいる。つまり、学校、家、アルバイトの3つを回っているだけなんだ。以前は、学校の外でクラブ活動や地元の社会人のいろんなサークルに入って先輩の社会人とコミュニケーションをとる場があった。そういうつきあいを経験して少しずつ大人に成長していくような仕組みもあった。

【化学】さっきも言ったように将来のアウトプット能力を予見させるような経験、活動を学生時代にやっておくべきだね。それはクラブ活動であろうが、研究活動であってもいいが、ちゃんと目指すべき目的と理由を明確にして、意識的にとり組む訓練を積んでほしい。インプット能力だけでは社会人として通用しないことを知ってほしい。

【電機】偏差値の高い大学に入ったということは、努力をしてきたという結果であり、評価の対象にはなるが、それが入社後のアウトプットにつながるということではない。部活、アルバイト、ボランティアでもなんでもいいが、大学時代の4年間ないし大学院を含めた6年間に、いったい何をしてきたのか、どういう成果を挙げたのかに注視している。「御社に入って何をしたいです」という学生には興味がない。

【流通】必ずしも入ったのが一流大学ではなくても、学問、アルバイト、クラブ活動を通じて、人と協調しながら何かのハードルを乗り越えた経験、失敗してそこから何かを得たという人は、入社しても必ず活躍している。逆に大学時代に冒険もせず、そつなく過ごしてきた学生は社会に出てもそつなくやるが、アウトプットがないんだ。

【サービス】学生に、かつて暴走族の総長で家業の農業を継いで成功した人の話をよくしている。その人は同じ農業仲間を集めて株式会社化し、そこでとれた農作物をブランド化して今は海外でも販売しているそうだ。それができたのも、暴走族の長であった時代に人をまとめる統率力などいろんな結果が問われることをやってきた経験があるからだ。結局、問われるのは何をやってきたかなんだ。再現性を持つ体験、経験を学生時代にぜひしてほしい。

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影)