不況の影響で、再び「就職氷河期」に突入した就職戦線は、厳しさを増している。企業各社は採用人数を絞り込んだため、大学の厳しい選別が行われている。有力人事マンが採用の舞台裏を語り尽くす。

【化学】今の状況下ではインプット能力とアウトプット能力の両方を兼ね備えた人材が求められている。インプット能力を測るには、大学の偏差値でなんとなく代替できるが、それだけ高くてもビジネスでは使いものにならない。やはり、問題を解決する力、新しいものをつくり出すアウトプット能力がなければいけない。インプットとアウトプット能力はある程度相関はあるが、別のものだ。両方の能力が高いほうがビジネスパーソンとしては成功するだろう。実際にある調査ではインプット、アウトプット両方が高いのはなんと学生レベルでは5%もいないという。逆に企業の幹部クラスを対象にしたアセスメントでは、両方の能力を持っている人は50~60%もいるそうだ。

【サービス】情報収集力もあり知的能力が高いだけではダメだ。それを活かしていかに成果に結びつけるかが問われている。そういうことができそうかどうかは適性試験や面接でも厳しくチェックしている。でも学生と接していて、感覚レベルでも5%もいないね。

【流通】うちの業界は家庭用品の担当であれば、商品も取引先もよく知っている人を貴重な人材とみなしていたが、最近は取引先から販売員が来て売るようになり、自分で直接売るという機会が少ない。大事なのは取引先の売り場をケアしながら全体としてどうまとめて売り上げを伸ばしていくか、対顧客の営業力プラス創造力、構想力のない人はダメだね。とくにバイヤーは売り場をどうマネジメントしていくか、顧客のニーズを捉えて、支持される商品をどう開発していくかという能力がより求められている。

【化学】こういう時代に成功している社員に共通するのは一言で言えば「変化に対応する能力」を持った人材だ。経済不況により、顧客のニーズもより厳しくなっている。なかなか見えてこないニーズに迷って立ち止まるのではなく、いろんな情報をキャッチし、ニーズを掘り起こしてお客に提案していく社員は実績を上げている。

【建設】打たれ強い、耐性があるという点では運動部出身の学生もしくはマネジャーもいいね。注目しているのは、プレーヤーとして立派な成績を挙げた人というよりは、控えの選手であっても、いかにレギュラーの選手たちを黒衣としてもり立ててきたのかという点だ。そういう学生は相手に対する心遣いも気遣いも持っている。たとえば六大学とか首都大学リーグなどの連盟の役員を経験した学生の中にもいい人材がいる。リーグは学生自身が運営し、たとえばスポンサーとの交渉などいろんな経験をしている。そうした役員をした学生は責任感も強いし、何かをやり遂げる力を持っている。

【電機】今のような時代は、真面目すぎる人、考えすぎる人はダメだね。正直言って業界自体が内需の不振やグローバル化の影響を受けて厳しい状況にある。ビジネスモデルが大きな転換点を迎えている時代にこそ必要な人材は、パイオニア精神に溢れた野武士タイプだ。しかし、今の学生はどちらかといえば真面目でスマートになりすぎている。今のような経済不況下ではおいしい話などどこにも転がっていないし、きれいな花は刈り取られ、雑草しか生えていない。それでも彼が行けばぺんぺん草も生えないと言われるほどのガッツがほしい。

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影)