7億ドルは2022年初なら805億円、今なら1015億円
図表3は家計の支出を表すもの(2人以上世帯)ですが、今年の2月以外は、ずっとマイナスが続いています。それもけっこう大きなマイナスです。国内総生産の55%程度を支える家計の支出が、実質賃金が増えないためにマイナスの状況が続いていることが、国内消費が弱い大きな要因です。
今年に入り、コロナがほぼ明けたということもあり、外国人観光客が急増し、今年10月は、10月としては過去最高の250万人を記録するなど景気を下支えしていますが、それでも景気全般には力強さがないのです。
したがって、2024年の日本経済が浮揚するかどうかは、まずは賃金、それもインフレを加味した実質賃金が上がるかどうかにかかっています。岸田首相の有言実行が絶対条件です。
グローバル企業を中心とする大企業では業績は全体的には悪くなく、また、優秀な人材を確保するためにも今年度並みかそれ以上の賃上げを行うところは少なくないと考えられます。
しかし、全雇用の7割を占める中小企業では、賃上げはそう簡単ではありません。コロナ対策のためのゼロゼロ融資の返済が本格化する中、業績も十分に回復できていない多くの中小企業では、インフレ率を超えるような賃上げはなかなか難しいのが実情です。
こうしたことを考えると、日銀は金融正常化、つまり短期金利の利上げを行うと思いますが、1年かけて0.5%程度まで上げるのがせいぜいでしょう。
米国は比較的堅調ですが、インフレ率が安定すれば、1%前後の利下げを1年ほどかけて来年後半あたりから行うと考えられます。
そのことを考えると、現状5%強ある日米金利差は、4%程度まで縮まると考えられますが、それ以上縮まるには時間がかかるでしょう。
そうすると、ドル・円相場は、140円程度にまで上昇すると考えるのが妥当と考えます。ただ、米国で金融危機が起こることや大きな紛争などが起これば130円程度まで上昇することもありうるかもしれません。
12月11日に大谷翔平選手がロサンゼルス・ドジャースと10年7億ドルというプロスポーツ選手史上最高額の超大型契約をしたと報道されました。この日の為替レートは1ドル=145円だったため、メディアは「1015億円」と大見出しをつけました。ご参考までに申し上げれば、この契約のタイミングがもう少し早い時期で、1ドル=115円程度だった2022年初めだったら805億円となり、1ドル=140円なら980億円と1000億円の大台を割る計算になります。1円7億円ペースで違ってくる。一瞬で大金が吹っ飛んだり、転がりこんだり……これこそが為替の影響力ということになります。