河川改修やダム建設でヤマトイワナのすみかを奪ってきた

県生物多様性専門部会で議論してきた大井川の在来種ヤマトイワナについては、11月8日公開のプレジデントオンライン(リニア工事とは無関係なのに「絶滅寸前の川魚を守れ」と難癖…またも意味不明な主張を繰り返す川勝知事の末路)で詳細に紹介したが、絶滅危惧に追い込んだのはすべて人間の活動である。

繁殖力の強いニッコウイワナを放流したのは、ヤマトイワナの減少に伴い減った釣り人を漁協が誘致するためだった。それ以前に行政による河川改修や、多数の電力ダムの建設によって、ヤマトイワナの好む自然環境はすっかり失われてしまった。

だから、「ヤマトイワナを是が非でも守れ」とJR東海に迫るのは不思議な話である。農業、林業を守るためにニホンジカ駆除が正当であると考えるならば、「ヤマトイワナを守れ」は説得力に欠ける。

自然環境保全を名目に、リニア計画を静岡県でストップさせたのでは、地元井川地区だけでなく、沿線住民への経済的な影響も大きい。

ところが、自然環境保全でも川勝知事の反リニアはとどまることがない。

リニア工事を巡る生態系への影響を議論する国の有識者会議が結論をまとめることに猛反発して、「大井川上流部の沢に生息する水生生物への影響に関する議論が不十分」とする意見書を国交省に送っている。

都合の悪いことから逃げる県の専門部会に存在意義はない

1年以上にわたって議論してきた有識者会議は、自然環境の大幅な変化などで当初の予測と異なる状況が生じることを踏まえ、特に不確実性の高いものは工事を進めながら、随時見直す管理手法を取ることを報告書案で示している。

つまり、JR東海のリニア工事着工を容認した上で、JR東海がリニア工事を行いながら、生態系への影響を評価判断して対応することを認めている。これは非常に合理的である。

ところが、反リニアに徹する川勝知事は、南アルプスの自然環境保全を盾に、JR東海の工事着工を何としても阻止したいから、有識者会議の結論を認めない魂胆である。

静岡県の生物多様性専門部会に議論を戻して、従来通りにJR東海に無理難題を突きつけるシナリオがはっきりと見える。

はっきり言って、県生物多様性専門部会の存在意義には疑問を呈さざるを得ない。

生物多様性とは、「バイオダイバーシティ」の造語である。「生物のにぎわい」といった意味であり、ヤマトイワナだけを保全してニッコウイワナ、混雑種を駆逐するという考えはない。すべて人々の生活と大きく関係する。

県専門部会は増え続けるニホンジカによる植生への影響などは議論しないどころか、避けている。つまり、南アルプスの現状を理解しようとしないのだ。

川勝知事の意向通りに、自然環境保全を名目にしてリニア工事着工を妨害する県生物多様性専門部会は即刻、解体すべきである。

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