北海道の小さな町で育ち、Twitterで札幌のホストに出会った
ユズが生まれ育ったのは、札幌から車で何時間もかかる小さな町だ。そんな話も、あまり隠さない。打ち解けてくると、相談室だけでなく、個別に会って話を聞くようになった。ある時は昼間、串カツを食べながら。別の日には中華料理屋で野菜炒めをつつきながら。彼女はいつも待ち合わせ時間にほとんど遅れずに来たし、行きたがるのは大衆店ばかりだった。何かをねだることはなかった。
ユズは歌舞伎町に来るまで、北海道から出たことがほとんどなかった。地元の高校を卒業後、運輸会社の事務職やパチンコ店、居酒屋のアルバイトをした。22歳のとき、ツイッター(現X)で同世代の男性と知り合った。フォローされてプロフィールを見ると、札幌に住んでいるようだった。写真の顔も好みだった。フォローし返すと、ダイレクトメッセージが来た。
しばらくやり取りを続けていたある日、友達と札幌へ遊びに行くことになった。その男性に伝えると、「じゃあ、会おうよ」と誘われた。少しわくわくしながら会った。「おれ、ホストやってるんだ」と明かされた。「よかったら来てよ」とも。
彼のことを好きだったのか尋ねると、「よく分からない」と言う。「別にそんなんじゃなかった気がする」。ただ、自分の周りにはいないタイプだった。あか抜けていて、気さくで、話していると楽しかった。地元に帰る日を延ばし、誘われた店に行った。
ホストクラブで過ごした楽しい時間が忘れられなかった
初めてのホストクラブ。そのときのことは「よく覚えていない」。酒が好きなわけではなかった。誘われると断れない性格で、ほとんど金はかからないと言われて行った気がするという。ただ、通い始めると楽しかった。誰かが常に自分の隣に座り、親しげに話を聞いてくれ、愉快そうに笑ってくれた。みんなイケメンだった。そして、手持ちの金はすぐになくなった。
店にまた来てほしいと促される日が続き、ある時、仕方なく「お金ないんだよね」と打ち明けた。待っていたかのように、「じゃあ、風俗やりなよ。紹介するよ」と言われた。札幌に出てきたときに始めたアルバイトを辞め、ススキノの性風俗店で働き始めた。「体を売るのは、最初から別にそんなに嫌じゃなかった。すぐに慣れたよ。変な客がついた時は嫌だったけど、いい人もいたし」。
稼ぎのほとんどはホストクラブの支払いに消えた。1カ月だけアパートに住んだが、家賃を払えなくなり、ネットカフェで寝泊まりするようになった。「なのにそのホスト、すぐに冷たくなったからね。まじむかつく」。そのホストとは数カ月もしないうちに縁が切れたが、ホストクラブで過ごした楽しい時間は忘れられなかった。