米中関税合戦は中国国民を苦しめる

米国は中国からアパレル、家電、雑貨、家具、アセンブリー部品などを輸入している。

その逆の、中国が米国から輸入する品目のほとんどは、食料(農作物、肉類、酒類)なのである。

そして、トランプ政権時代から米国は中国製品や品目に対して高関税をかけるようになった。そこで、中国も米国の高関税に対抗して、同程度の関税を輸入品にかけると宣言し、実行した。

しかし、両国の事情は大きく異なっていた。

先に述べたように、中国が米国から輸入する品目のほとんどは食料である。これに高関税をかけてしまい、最終的には消費者である中国国民を苦しめることになったのである。

ただ、米国民も高関税分のコストを引き受けなければならないので、お互い様と言えないこともない。

そこで米国は輸入物価を下げるため、意図的に“ドル高”に持っていった。中国が20%の追加関税分を20%のドル高で“相殺”したわけである。

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だが、中国は米国と同様の手は使えない。

知ってのとおり、このところどんどん人民元レートが下落している。輸入はできるものの、輸入価格はドルベースで高くなったし、さらに米国への報復措置としてかけた追加関税分が上乗せされている。

中国国民からすれば、報復関税が痛みとなって刺さってきたのだ。

こうした措置を、バイデン政権が撤廃するかもしれないと、中国側は期待を抱いていた。だが、それは見事に裏切られ、今日に至っている。

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