※本稿は、坂東眞理子『思い込みにとらわれない生き方』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。
「4年制なんかに行けばお嫁に行けなくなる」
ここでは日本の学歴社会に焦点をあてて考えてみたいと思います。
私の世代だと、高校から大学へ進学する女性の割合は10%もいませんでした。特に女性は「女の子に学問はいらない」「東京へは出せない」「女の子が4年制なんかに行けばお嫁に行けなくなる」といった親の思い込みから、成績が良くても、大学に進学できない人が数多くいました。そして、「それでも勉強したい」と望む場合には短大へ進学したものでした。
つまり、昔は、優秀だけれども親のアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の影響で、短大や高校卒業という進路を選ばざるを得なかった女性が多かったのです。
しかし今は、短大卒と言うと「成績が悪くて4年制に行けなかったから短大に行った」という偏見をもっている人もいます。そういったことも影響して短大への進学率が著しく下がっていますし、短大そのものの数も減ってきています。
「学歴フィルター」は給与には作用しない
大企業は、ほとんどが大卒を採用するので、大学を出ていることが必要となっています。
日本の場合、時代によって「大学に行くのがスタンダード」になったり「高校卒がスタンダード」になったりしており、今は偏差値の高い大学を出ることが学歴の良さだという思い込みがあるのです。しかし入試の偏差値が高い大学も入学してしまえば、ほとんどの人が卒業できますし、大学の成績は就職であまり考慮されなくなっています。
しかし、他の国はそうではありません。
例えば、アメリカは日本以上に学歴社会です。大学入学は日本より楽ですが、勉強しなければ留年、退学です。卒業するまでしっかり勉強して良い大学を出て、さらに大学院や専門職大学院へ進学して良い成績をとっていれば、高いお給料の仕事に採用される、というシステムなのです。企業は、人材が必要になったら新卒者だけでなく中途転職者も募集し、採用します。
しかし日本は、「大卒」として4月に全部一律に採用し、大卒の新入社員は一律の給料です。就職試験の面接時などでは少なからず、卒業予定大学名でのアンコンシャス・バイアスのフィルターがかかるのに、大学名や大学時の成績の差が給与として反映されることはありません。