自分のためにも相手を許す

――人生を振り返って自分を変えられたという経験はありますか。

僕はすぐに人のことを嫌いになってしまうタイプで、しかも表情にすぐに出る。電車を降りるときに肩がぶつかっても気にせずに走り去ってしまう人を見ると、瞬間的にイラッとしてしまいます。

見知らぬ他人にイライラするのも疲れてしまうし、これからも付き合いがある人のことを嫌いになってしまうと、いろんなことがうまくいかなくなってしまう。これは問題だなと思ってからは、イライラする前に自分を納得させるワンクッションを入れるようにしています。

電車を降りて肩がぶつかって、一瞬イラッとしたらそのときに「でも、あの人にも帰りを待っている人がいるんだろうな」とか、「自分の大切な人が事故に遭って急いでいたのかもしれない」と考える。そうすると自分の怒りを鎮められる、ということを学びました。人を許せるようになると自分の心が安定するので、自分のためにも相手を許すというのはこれからも大切にしていきたいです。

笑いとアイデアが生まれる仕組み

――自分を変えたことで、ビジネス面でうまくいくようになったと感じる部分はありますか。

『THE EMPTY STAGE』という芸人が集まる即興ステージに出たときに、相手のことを否定せずに会話するというのを学びました。

「あなた浮気してるでしょ?」と振られたときに「してないよ」と返すと、話がそこで止まり全然展開していかないんです。だから、否定するのはご法度。ではどうするかというと「……お前いつから気付いてたんだよ」と認める。すると、面白いように話が転がっていきます。

例えば、会社で上司に企画を提出するときに「いや……こういうところが良くない」という言葉で始まってしまうと、なかなかポジティブには考えられないと思います。それよりは、「なるほど、いいね。それをもっと青春っぽい印象にするなら、どんなものになるかな?」と言われたほうがアイデアは生まれやすい。

自分の思い描く素敵な上司は「いや……」という言葉からは話さないでしょう。いったん自分のことを認めてくれる人に惹かれるのは当然です。だって、一緒にいて気持ちいいですから。

僕も、昔は相方の池田とネタ合わせをするときに「いや、それつまらない」と言っていた時期があります。だけど、ある日池田から同じセリフを言われたときに僕はイラッとしてしまったんです。自分は言うくせに言われたらムカついてしまう。これは良くないですよね。

自分が言われてうれしい配慮は自分から取り入れて、よりよい関係を築いていけたほうがきっとたくさんの笑いとアイデアが生まれると思います。

(取材・文/ライター・山岸南美)
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