やっと政治が動き始めた

皇位継承問題をめぐる最近の主な動きを振り返ると以下の通りだ。

○令和5年(2023年)2月26日の自民党大会で岸田文雄首相(総裁)は次のように呼びかけた。
「日本国民統合の象徴である皇室における安定的な皇位継承を確保するための方策への対応も先送りの許されない課題であり、国会における検討を進めてまいります」

○9月13日に行われた自民党の役員人事で再任された萩生田光一政調会長に対して、岸田首相が「皇位継承策の作業を急がなければならないという問題意識」を伝える。

○10月20日、新しく衆院議長に就任した額賀福志郎衆院議員が記者会見で皇位継承問題への取り組みについて議論の進展に意欲を示した。「各党の協議の経緯や状況を把握した上で立法府の考え方を整理していく」と。

○同23日、岸田氏は臨時国会での所信表明演説の中で「皇族数の確保のための具体的方策」について「『立法府の総意』が早期に取りまとめられるよう、国会における積極的な議論が行われることを期待します」と訴えた。

○同30日、岸田氏は衆院予算委員会で、自民党内で総裁直属機関の会議体を新設し、安定的な皇位継承策などを議論すると表明。先行的に自民党内の意見集約を行い、自民主導で国会全体の合意形成を図りたい姿勢を示した。

○11月17日、自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」が初会合。

所信表明演説に隠されたトリック

こうした流れから、皇室典範の改正も視野に入れた皇位継承策への本格的な取り組みが、国会で進められる可能性が浮かび上がっているように見える。

だが楽観はできない。岸田氏の所信表明演説を少し丁寧に読み返すと、ある種のトリックが隠されていることに気づくからだ。

岸田氏は所信表明演説で次のように述べていた。

「安定的な皇位継承を確保するための諸課題等、とりわけ、皇族数の減少への対応も、国の基本に関わる重要な課題です。政府としても、このような認識の下、皇族数確保のための具体的方策等を取りまとめ、国会に報告いたしました。この重要な課題についても、『立法府の総意』が早期に取りまとめられるよう、国会における積極的な議論が行われることを期待します」

ここで見逃せないのは、冒頭に触れている「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」が置き去りにされている事実だ。

政府が国会に報告したのは、あくまでも「皇族数確保のための具体的方策」にすぎない(「『“天皇の退位等に関する皇室典範特例法に対する附帯決議”に関する有識者会議』報告書」)。したがって、自民党に新設される会議体においても、「皇位継承の安定化」という最も肝心な本来の課題ではなく、そのはるか手前の「皇族数の確保策」だけにとどまる可能性が高い。

要するに、皇族数を“目先だけ”一定規模で維持できればそれで一丁上がり、という無責任な姿勢が透けて見える。これでは何ら問題の根本解決にはならない。

国会議事堂
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