イスラエルとハマスの軍事衝突に関して、BS-TBSの番組が元日本赤軍リーダー重信房子氏の娘、重信メイ氏を起用し批判を集めた。国際政治学者の舛添要一さんは「イスラエルとパレスチナの問題は、ユダヤ人への差別と迫害の歴史を抜きには理解できない。日本のマスコミはそうした背景に疎いのではないか」という――。

ネタニヤフ政権はハマス殲滅を目指している

10月7日、イスラム組織ハマスがガザからイスラエルを奇襲攻撃した。これに対して、イスラエルのネタニヤフ政権は、ハマスの壊滅まで戦うとして報復攻撃を展開している。

この事件を日本のマスコミも一斉に報じたが、中には首をかしげたくなるような報道もあった。特に10月11日にBS-TBSの「報道1930」が、元日本赤軍リーダーである重信房子氏の娘、重信メイを起用した際にはネット上でも多くの批判が沸き起こった。

日本のマスコミは中東情勢やパレスチナ問題に疎いのではないか。

今回の戦争には、歴史、宗教、人種差別などの背景があるが、日本のマスコミはそのような問題に関する知識も関心も欠けていると感じる。

ユダヤ人の2000年にわたるディアスポラ、ポグロム、ホロコースト、そして建国後の4次にわたるアラブとの戦争の歴史を振り返れば、ネタニヤフ政権がハマスを殲滅するまで攻撃を止めないという論理が理解できる。

ハマスによる今回の攻撃を「第2のホロコースト」ととらえているからである。

ユダヤ人は人間として扱われなかった

私は、50年前にフランスに渡り、その後スイスやドイツなどでも研究生活を続けたが、ヒトラーがヨーロッパを支配した時代を研究対象としていたので、なぜユダヤ人がナチスに弾圧されたのかという問題に強い関心があった。

50年前のヨーロッパでは、ユダヤ人に対する根強い差別を日常生活の中で体験したが、この差別は、残念ながら今のヨーロッパでも続いている。

キリスト教が広まったヨーロッパ社会では、キリスト教徒はユダヤ教徒を軽蔑してきた。こうして中世以来、ユダヤ人は差別や迫害の対象となり、就くことのできる職業も限定された。

極論すれば、人間として扱われなかったのである。それだけに、ユダヤ人は宗教的にも、人種的にも強固なアイデンティティを確立していった。

アウシュビッツ強制収容所
写真=iStock.com/Oliver Chan
ユダヤ人は人間として扱われなかった(※写真はイメージです)