巨大企業が壮大な投資合戦を繰り広げている

舞台は唐突に変わった。いま、世界的規模で半導体製造企業の熱狂的な投資が展開されている。「一度にこんなに手を広げて大丈夫か」と驚くほど過激にして壮大な投資状況である。

というのも2020年に生産された半導体チップは1兆300万個だったが、2030年には2兆個から3兆個に膨らむと予測されるからだ。

軍用機のイメージ
写真=iStock.com/guvendemir
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インテルは米国内のニューメキシコ州リオランチョに35億ドル(700人雇用)、オハイオ州ニューアルバニーに200億ドルを投資し、3000人のエンジニアを雇用するなど二つの工場を新設する上、ドイツ、イスラエルに数百億ドルを投資すると発表した。

マイクロンはインドと日本に進出するほか、米国内ではオレゴン州グレシャムに8億ドル投資して工場新設、ニューヨーク州クレイに200億ドルを投下し、9000人規模の新設工場。マイクロンはカリフォルニア州に二ヶ所のR&D(研究開発)センターを持つが、これらに加えてテキサス州オースティンほか、ミネソタ州ミネアポリスにもR&Dセンターを持つ。

老舗のTI(テキサス・インスツルメンツ)もユタ州リーハイに110億ドル(800人)、テキサス州リチャードソンに60億ドル、同州シャーメンに300億ドルの新設工場を建設するといった具合である。

安全保障の名目で米政府がバックアップ

半導体製造で世界一のTSMCは米国、日本のほか、本丸の台湾で新しく三カ所に新工場だ。韓国サムスン、SKハイニックスも負けてはいない。とくにサムスンはテキサス州オースティンの研究センターに加えて同州テイラーに173億ドルを投資して新設工場の投資拡大を決めた。

宮崎正弘『半導体戦争! 中国敗北後の日本と世界』(宝島社)
宮崎正弘『半導体戦争! 中国敗北後の日本と世界』(宝島社)

これらの大規模な投資は米連邦政府が巨額補助金を用立てするからだ。

補助金には①政府の直接的資金供給、②好条件での融資、③債務保証、④減税ならびに起業の社内保険料の減免、⑤出資形態の資金注入などの方法が取られる。本来なら補助金はWTO違反である。

だが、「安全保障を除く」とする例外規定があって、バイデン政権は10ナノ以下の半導体すべてを対中禁輸として、「安全保障上重要な戦略物資」という位置づけに変更した。

このチャンスを逃すなとばかりに各社がダボハゼのように補助金に便乗したのである。バイデン政権が提示している補助金は、向こう十年間で270兆円にのぼる。

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