6万円超の保険料が30年で8760円に引き下げられた

私は早速、複数の雑誌でこの問題についての記事を書き、当時の運輸省(現・国土交通省)と大蔵省(現・金融庁)に申し入れを行った。その結果、国は大慌てで料率を見直し、バイクの保険料は上記の表にある通り一気に引き下げられたのだ。

ちなみに、あれから30年以上が経過した現在のバイクの自賠責保険料は、なんと8760円まで引き下げられている。あの当時、私たちライダーが義務として徴収されていた6万円以上の保険料は何だったのか? 本当に唖然とするばかりだ。

自賠責保険料におけるあまりにずさんな運用を目の当たりにしてしまった私は、その後も自賠責の問題を注視し続けてきた。特に深刻だったのは、「死人に口なし」の査定問題だった。保険会社が任意保険と一括で自賠責の査定を行う際、はっきりした根拠も示さず非常に厳しい査定を行っていたケースが次々と明るみに出たのだ。

さらに調査を進めたところ、なんと、被害者が死亡すると、傷害事案に比べて、「100%の過失あり(=無責)」と判断されるケースが10倍も高くなっているという事実が判明したのだ。まさに「死人に口なし」だ。

銀座の交差点
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外からは見えづらい保険料、運用益の使い道

「被害者に100%の過失あり」と判断されると、自賠責からも任意保険からも、保険金は1円も支払われない。つまり、保険会社は保険金支払いを大幅に減らすことができる。

この払い渋り問題に関しても、すぐに国会で取り上げられ、その後、自賠責査定制度の大改革が行われた。ところが、「無責」事案は、査定制度の改革が実施される前、つまりメディアの批判を受けたその年に、いきなり半減するという、摩訶不思議な現象もみられた。

自賠責保険は、交通事故被害者への保険金の支払いだけでなく、運用益(保険会社の滞留資を運用して得られた利息)によって被害者保護・救済、交通事故防止や救急医療体制の整備などの名目で各種事業が実施されている。

保険会社は運用益全額をほかと区分して、準備金として積み立てることが法令で義務付けられている。そして各損保会社から拠出された運用益は日本損害保険協会が受け、「自賠責運用益拠出事業」の運営をしている。

同協会のウェブページでは事業内容を確認できるが、運用益の流れや施策詳細は外から見えづらい。使われ方は適切なのか、効果はどれほどあったのか、不透明さが依然として残る。