ヒット&アウェイで戦うのは効率が悪い

3 市場環境が良いか

どのように市場を見極めるか

私が参入時に重視しているのは、

・長期的なトレンドか
・現実的かどうか
・大きなビジョンがあるか

という3点セットが揃っているかどうかである。

小刻みな参入を繰り返し、ヒット&アウェイで戦うというのは、ビジネスにおいては効率がよくないのだ。

長期的な取り組みを続けていくと常に役に立つ顧客基盤や能力を増強していける。

本書でもS氏が挙げていたが、このような観点を重視する人は今後成長が見込まれる産業の黎明れいめい期・成長期を意識して狙うとよい。

ほとんどのプレイヤーが手探り段階である黎明期においては、VTuber事務所「にじさんじ」を運営するANYCOLORのような成功例を如何に早く発見しコピーするかが重要となる。

市場予測の方法に関しては多くの著書があるため他を参照頂きたいが、一時的な流行か否かを簡易に判断するには「熱狂的に使っている人がおり、今後その利用者の拡大が見込まれるか」を見るとよいだろう(参照:Sam Altman “How to Succeed with a Startup”)。

逆にメディアでは騒がれているが熱狂している利用者がいないものはかなり怪しい。スモビジとして手をつけるものではないだろう。

スタートアップに限らず、スモビジの場合も多いのがバズワード系のビジネスであるが、この場合は特に注意が必要となる。

バズワードだから売れるわけではない。

バズワード関係に参入する際には何故その商品が利用者にとって従来製品より良いのか、という問いに対して明確に答えられるようになるべきであろう。

過去のAI、Web3、ビッグデータ、ブロックチェーン系のスタートアップがその後どのような運命を辿ったかを知れば、注意すべきであることがよく分かるだろう。

NFTマーケットプレイスのイメージ
写真=iStock.com/ArtemisDiana
※写真はイメージです

ちなみに、大企業が新規事業を検討する際に必ず登場する指標である「市場規模」にも触れておこう。

市場規模とは、あるサービスの売上を全企業分、合計した数値である。

自分自身のサービスがあまりに革新的で、この市場規模自体を拡大させるという作用がない場合は、市場規模が売上の上限となる。

この市場規模の中で、ある企業が持っている売上の比率をシェアという。

かなり簡易に市場規模を推定する場合には、自分がやりたいビジネスと類似のビジネスに取り組んでいる企業の売上規模(当該サービスの売上)を真っ先に調査し推定する努力をするべきだ。

市場規模は、例えばその企業のシェアを25%と推定するならば、売上を4倍にすればよい。

スモビジの場合、大企業と異なり市場規模に敏感になりすぎる必要はないが、大きな市場には基本的に強い競合がいることに注意しよう。

一方で誤解してほしくないのだが、スモビジにとってマクロな環境分析の意味がないわけではない。

長期的に取り組めるということは持続性のためには重要なのだ。

すぐに潰れるトレンドに身を預けることはスモビジのコンセプトである安定・着実から外れる。

どの企業や政府が具体的に何をするか予測することは難しいが、何かしらポジティブな要因が発生しやすい市場というのは、実はマクロ分析によりある程度特定することが出来る。

追い風がある場所に身を置くことが重要なのである。

スモビジオーナーの口癖「とりあえず張っている」

成長市場かどうか

ビジネスの基本は成長の波に乗ることであって、自分で波を引き起こすことではない。

1つの会社が情勢を大きく変化させるなどと考えるべきではないのだ。

また、よくビジネスには運が重要だと言われる。

私自身も予想していなかった幸運により業績が一気に上昇した経験は何度もある。

しかしこういった機会を「運よく」掴むことが出来たのは、長期的に見ればこの市場は成長するだろうと見極め、その変化をしっかり待っていたからというケースがほとんどだ。

長期的に成長する市場においては自社の業績を向上させる政策や大企業の方針の変更が頻繁に起きるが、衰退する市場においては逆である。

よくスモビジオーナーは「とりあえず張っている」という言い方をする。

これは現状、具体的な動きを取っているわけではないがコミュニティで情報交換をするなどし、強烈な追い風が吹くことを待っているという意味である。

このように複数の市場に対して待ちを続けていると、追い風が吹いた際にその機会を獲得することが出来るのだ。

このように機会を虎視眈々と狙っているプレイヤーはたくさん存在する。

追い風があったとしても準備ゼロのプレイヤーがその機会を獲得することはかなり難しい。

意識して成長する市場を見極めてチャンスを待ち構えるとよいだろう。