ミスを織り込む“フェイルセーフ”システム
ちなみに、学生向けのクイズ大会「STU」の予選であるペーパーテストでは、通過ボーダーが通常70点台前半だったので目標点を80点に設定しました。これは当日のアクシデントも想定して決めました。
クイズは出題範囲が無限大なので、覚えたものが出題されず、逆に押さえていないものがたくさん出題される可能性もあったわけです。
それでもなお通過ボーダーに乗せるには、どんな問題群でも対応できる地力が必要だな、という意識づけだけはしておきました。
「ミスをしないように日ごろの勉強から気をつければいい」という反論もあるでしょうが、「ミスが起こる可能性を0%にする」というのは不可能です。
もちろんミスを防ぐ意識は大切です。ただし、どれだけミスを防ぐ努力をしても、完全になくすことはできません。
したがって、僕らにできるのは、
「ミスを防ぐ意識を最大限に注いで、ミスを最小限に抑える」
ということだけなのです。
みなさんは、「フェイルセーフ」という言葉をご存知ですか? これは、製品やシステムに異常があっても安全を維持できるような仕組みのことです。
たとえば、踏切の遮断機。停電になって、機械が動かなくなったときでも、衝突事故を防ぐため、必ず遮断桿を下ろした状態で止まるようになっています。
目標設定でも、この「フェイルセーフ」の考え方が大切です。
本番に何かトラブルがあっても合格ラインに達するよう、目標は余裕をもって設定しましょう。
目標までの距離を知るには――今の立ち位置を“数値化”する
目標設定の重要性については、すでにお話ししたとおりです。
目標は「勉強する理由づけ」であり「独学を続ける力の源」になる。だから目標を設けることが独学では欠かせない。
そういう話でしたね。
そのうえで重要になるのが、
「自分のいまの実力を測る」
ということです。
言い換えれば「現在地」を把握するということです。
それも、なるべく正確に「数値」で把握することが、適切な計画を立てる必須条件なのです。
受験の場合は、模試を受ければ、「点数」「偏差値」という数値で現在地を把握できます。「A判定」「B判定」「C判定」といった指標も示されます。
いまの自分の実力や、いまの自分に足りないものを、残酷なまでに正確に教えてくれるわけですね。
僕はそれほど模試がイヤではありませんでしたが、もちろん、思ったよりぜんぜんできなくてガックリきたことはあります。
でも決して結果から目をそむけずに「なんで?」「どうすればいい?」という発想をもって計画を立てる、という具合に独学を進めました。
受験や資格試験など「合否」が下されるものなら、模試を受けずとも、「過去問」を解くことで、自分の現在地を数値で把握できます。
こうしたわかりやすい指標がない場合でも、何かしら数値的な指標を設け、そのなかで自分の現在地を把握することをおすすめします。
たとえば次のように。
「ネイティブと問題なくチャットできるくらい英語力をつけたい」
→ネイティブの知人がいれば、1時間くらいチャットして相手に点数をつけてもらう
「経済ニュースに対して自分の見解を述べられるくらいの知識をつける」
→日経新聞からサンプル記事を採取し、そのうち何割、経済用語を正確に理解しているかを点数化する
このように、独学では「数値化」する、ということが非常に重要になってくる場面があります。
ポイントは主観的ではなくなるべく客観的に行うことです。