「1000カット」の登場で打撃を受けたが…

順調だった社業に変化が訪れたのは1990年代の中頃からだ。

1996年、千代田区神田美土代町に1000円カットのチェーン「QBハウス」の1号店がオープンする。1000円札1枚でヘアカットをする店で、洗髪、マニキュアなどはやらない。カットにかかる時間はおよそ10分。いわゆる「1000円カットの床屋」である。

以後、1000円カット店は瞬く間に全国に進出していく。こうした店には男性だけでなく、女子もまた利用することで客数を増やし、利益を上げた。こちらもまたドラッカーが説く「顧客の創造」を実践した業態だ。調髪それ自体ではなく、安さと時間を前面に出した新業態である。

純ちゃんは「大きな影響を受けた。特に若いお客さんを取られた」とは思ったが、ニュー東京にも生き残る術はあると信じている。

「うちみたいな床屋さんの景気が悪くなったのは1000円床屋さんが出てきた後でした。でも、1000円床屋さんだって儲けを続けるのは大変だと思います。だって、バリカンを入れて、ガーッと刈り上げて、掃除機で髪の毛を吸い取る……。それで10人の頭を刈って1万円でしょう。

郊外ならできるかもしれませんが、うちみたいに高い家賃を払う場所ではとても同じことはやれません。その証拠に有楽町の駅前にも1000円床屋さんが一軒ありましたけれど、もう辞められましたね。地価の高いところでは難しいと思います」

コロナ禍を乗り越えて「グーグルで星5つ」

「うちの料金は3400円です。頭を刈って顔を剃ってシャンプーして、その値段。この辺のお店だと4800円とか5000円じゃないかしら。有楽町では安いです。

コロナ禍ではほんとにお客さんが減りました。1日に6人しか来なかった日もありました。おかげさまで今はもう戻りましたよ。昔からのお客さんに加えて、若い方もいらっしゃるようになったんです。ほら、あれ、グーグルって言うんでしょう?

あのクチコミでね、褒めていただいていて、星5つですよ。

『料金が安くて、年を重ねたやさしいお姉様方が癒やしてくれる』。そんな、ありがたいコメントがあるそうです。

うちは近所に比べると安いから若い方もいらっしゃることができる。私はね、先生方にはひとりあたり3万円は売り上げないとダメよって言ってるんです。そうですね、ひとりの先生が8人から9人をサービスするとそれくらいになるんです。それくらいの売り上げがないと、とてもお家賃を払っていくことはできません」

「ニュー東京」の店内
撮影=プレジデントオンライン編集部
「ニュー東京」の店内