アメリカを動揺させる中国発のウソ情報
中国がAIを駆使し、オンラインで情報戦を展開しているおそれがあるようだ。フェイク画像で主張に信頼性を持たせ、アメリカの世論操作を試みている可能性があることが、Microsoftの研究者たちが発表した報告書から明らかになった。
Microsoft脅威分析センターの統括マネージャーであるクリント・ワッツ氏は9月、Microsoftのブログ記事を通じ、中国がAIで生成した映像メディアを広範な活動に利用していると警告。政治的な分断を煽るなどの目的で悪用していると指摘した。
また、Microsoftの研究者らが9月に発表した報告書は、中国がAIを駆使し、米国投票者を模倣するようなソーシャルメディアアカウントのネットワークを操り、偽情報を広めているおそれがあると指摘している。
報告書は生成AIを悪用した情報操作として、2つの実例を取り上げている。どちらもソーシャルメディアへの投稿に、AI画像を添えたものだ。1点目はアフリカ系アメリカ人に対する人種差別抗議運動「ブラック・ライブズ・マター」を支持する内容で、自動車の車内から狙撃される人物を描いた刺激的な画像となっている。
この画像は中国共産党系の自動投稿アカウントが最初に投稿し、その7時間後、アメリカの保守派有権者になりすました別アカウントによって再投稿された。
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2点目は、銃犯罪が絶えない米社会を批判する画像だ。自由の女神が、本来左手に抱えている独立記念日の銘板を手放し、代わりにアサルトライフル(突撃銃)に持ち替えている。「暴力の女神」との文言が添えられている。Microsoftによるとこの女神画像も、中国関連の一連のボットが投稿したという。自由の女神には5本以上の指が描かれており、手の描写に弱い生成AIの特徴が表れている。