日本の災害でも悪用されるおそれがある
情報戦は世の常とはいえ、とくに災害時の誤情報拡散については、越えてはならない一線を越えてしまった。自宅を失ったハワイの被災者たちが資金面での早急な援助を必要としているなか、支援当局が毒ガス付きの収容所を建設しているとの風説が流れれば、住民としては支援の申請を躊躇せざるを得ない。FEMAについては、資金援助を申請すると土地を強制収用されるとの偽情報も拡散し、被災した住民たちに困惑が広がった。
AI画像を用いた偽情報の拡散は、現在のところアメリカを主なターゲットとしているようだ。銃問題や人権問題を題材に国内の分断をあおり、また、ハワイの災害がアメリカ自身の気象兵器によるものだったなどの陰謀論を拡散している。
だが、日本としてもひとごとではない。大災害が起きた際、海外発のデマが日本に仕向けられないとも言い切れない。ただでさえ情報が錯綜しがちな災害時において、円滑な支援が妨げられるおそれがある。
近年、ソーシャルメディアはもはや災害対応の必須級のツールとなっている。大雨や地震など近年の災害においては、消防への救助要請がつながらない際、ソーシャルメディアに特定のハッシュタグを付けて投稿し、関連当局の目に留まる事例が多く報告されている。そのほか、取るべき行動や避けるべき行動など知見が交わされる例も多い。
ネットのウソを野放しにしていいのか
万が一にも日本在住のユーザーを装い、海外から偽情報が混ざるようなことがあれば、ネットは善意の情報に頼れる場ではなくなってしまうだろう。文字情報ですら混乱の種となるおそれがあるが、目を引きやすく信憑性も帯びやすいAIのフェイク画像が添えられていたとすれば、誤情報拡散のリスクは一段と高まるだろう。
こうした事態が起きないことを望むが、AIは格段に進歩し、リアルな画像を容易に生成できるようになってきている。Microsoftのスミス氏が提言するように、国際的な法規制を検討すべき段階に来ているのかもしれない。