中国信託大手の支払いが遅れている
8月中旬、中国で高利回りの資金運用商品として需要が高かった、“信託商品”の市場に衝撃が走った。一般的に“信託商品”とは、ノンバンク企業が設定や運用・販売を行う、信用力が相対的に低く高利回りの金融商品を指す。その大手である中融国際信託は、信託商品購入者の一部に約束通り資金を返すことができなかった。
今回の事件の背景には、中国国内の不動産バブルの崩壊に伴い、不動産やインフラ関連の民間企業や地方政府系企業の資金繰りが急速に逼迫していることがある。その影響を受け、不動産やインフラ関連のプロジェクトや関連企業に資金を貸し出した中融国際の信託商品の資金繰りも悪化した。
高利回りの投資商品の価格が下落する不安が高まったのは、今回が初めてではない。2022年の年初、大手不動産デベロッパーの恒大集団(エバーグランデ・グループ)が販売した、金融商品から資金が約束通りに返らない懸念が高まった。当時、購入者は早期の資金返還を求めデモを起こしていた。
足許、不動産などへの投資に依存した、中国の経済成長は限界を迎えつつある。先端分野での米中対立の先鋭化、不動産市況の悪化などで、海外に流出する資金も増えた。今後、経済環境の厳しさは増し、返金が難しくなる高金利商品などは増えるだろう。これまで懸念されてきたことが、いよいよ現実のものになりつつある。中国経済の先行きの不透明感は一段と暗雲が立ち込めている。
中国で需要が高い高金利商品の実態
中融国際の顧客企業のうち、“湖南金博碳素(KBCカーボン)”と“南都物業服務集団”は、投資していた信託商品の返金が期日までになされなかった事を明らかにした。8月中旬、KBCカーボンと南都物業の株価は下落した。
信託商品とは、中国で取引される高利回りの資金運用商品の一つをいう。中融国際などのノンバンクは、こうした高金利商品を使って富裕層や事業法人などから資金を調達する。ローン債権などに投資するファンドを設定し、個人や企業などに投資資金の拠出を求める。こうした金融仲介のあり方は預金の収集を経由しておらず、“シャドーバンキング=影の銀行”などと呼ぶ。
中融国際などが設定したファンドは、地方政府傘下の投資企業である“地方融資平台(LGFV)”や民間の不動産デベロッパーなどに資金を貸し出した。特徴は利回りの高さだ。その分リスクも高い。KBCカーボンが購入した信託商品の予想収益率は7.0~7.2%(年当たり)だったと報じられた。8月中旬、中国10年物国債の流通利回り(長期金利)は2%台半ばだったことを考えると、いかに高金利を提供していたかが分かる。