初期費用は15万~60万円、定期費用もかかる

気になるのが契約に伴う費用です。公正証書作成の費用は法的に決まっていますが、専門家への報酬はさまざまですし、契約内容によっても変わります。あくまでも参考程度にご確認ください。いずれの契約も定期的管理を専門家に任せることを想定しています。

財産管理等委任契約
・契約時の費用:5万~20万円+公正証書作成費用(1.5万円程度)
・定期的費用:月額3万円~(資産額による)

任意後見契約
・契約時の費用:10万~40万円+公正証書作成費用(2万円程度)
・後見スタート時の手続費用:15万~20万円(任意後見監督人選任申立)
・後見スタート後の定期的費用:月額3万円~(資産額による)

このような費用を払ってまで準備する必要はないと考える親は多いと思います。一方で「子どもに迷惑をかけたくない」という思いも持っています。

財産管理等委任契約は、加齢とともに体調を崩す場面も多くなり、使う機会は結構あるでしょうが、任意後見契約のほうは、判断能力を保ったまま最期を迎え、「結局使わなかったね」となるかもしれません。火災保険や生命保険などと同様、起こってほしくはないけれど、いざ起こってしまったときのために平時から備えておく、保険のようなものだと考えてはどうでしょうか。

お金に関する話をしている家族
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

「頭の保険」を契約するかどうか、家族で相談を

任意後見契約に熱心に取り組む勝司法書士法人の勝猛一氏は、任意後見契約のことを「頭の保険」と表現します。掛けておいた保険が効力を発揮するのは、本人の判断能力が不十分になったときです。保険金を請求するときのように、医師の診断書を添付して任意後見監督人の選任申立てを行うというわけです(※3)

※3 勝猛一『任意後見の実務』(日本加除出版)

「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」のセット以外にも、これらを補完する制度として、「見守り契約」「死後事務委任契約」「終末医療等に関する宣言」「遺言」「家族信託」があります。しかし、判断能力が低下してしまえば、法定後見以外の選択肢はなくなります。

元気なうちにこそ、望ましい終末期の在り方を考え、そのためにどのような制度が利用できるのか、信頼できる専門家のアドバイスを受けながら、準備を進めていくことが大切です。

親と子どもの年齢を考慮し、サポートが必要な期間がどのくらい続くことになりそうか、現在だけでなく将来の姿も見据えたうえで、納得のいくまで話し合ってください。

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