主に専門家が行う法定後見は、自由度が低い

法定後見の場合、前述のように、成年後見人等の選任権限を持つのは裁判官です。本人や申立人の意向を踏まえつつ、諸事情を勘案して選ぶのですが、実際に選任されるのは親族以外が80.9%を占め、司法書士や弁護士、社会福祉士等の専門職が就くことがほとんどです。

その背景には、申立書に記載する成年後見人等の候補者として、親族を指定する割合が23.1%程度に過ぎないことがあります(※2)。身寄りのない高齢者が増えていることが一因かもしれません。たとえ親族を候補者として記載していても、認められないケースもあります。

専門家が後見人に選任されると、本人の財産を保護することが主目的であるため、それまでの家族関係等が考慮されるとは限らず、子や孫への贈与や生活費の援助など、親の財産を減らす行為は、原則として認められません。また、不動産売却も家庭裁判所の許可が必要であるなど、自由度が低いと言わざるを得ません。

しかも、本人の判断能力が回復しない限り、原則として、いったん利用を開始した成年後見制度をやめることはできず、専門家への報酬を払い続けることとなります。

※2 最高裁判所事務総局家庭局『成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―』より

親が元気なうちに締結したい「2つの契約」

そこで、有力な選択肢となるのが、本人の判断能力があるうちに「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」をセットにして締結することです。

財産管理等委任契約とは、判断能力の低下はないけれど、加齢や病気で自分のことが自分でできない人のための支援や手配をするための契約です。全財産を一括して委任する必要はなく、管理対象とする財産や委任事務及び代理権の範囲等を定めて契約書を作成します。

任意後見契約とは、本人自らが信頼する人を後見人に選び、将来認知症等になったときの自分の生活や療養看護、財産の管理に関する事務を委任するものです。別紙として作成する代理権目録に、定期的な収入・支出の管理、各種支払いや納税、医療や介護等に関する事項など、代理権を付与する事項を網羅しておきます。