「ほぼ」と「ほぼほぼ」は何が違うのか
冒頭に紹介したような畳語が中学入試で単独問題として出題されるのは大変珍しいことです。むしろ、空欄補充で畳語を補う形式の問題が頻出します。いずれにせよ、知らない畳語が文章に登場したときに、どのような意味のことばなのかをすぐに考えるくせを子どもたちには身につけてほしいものです。畳語に込められた意味に目を留めることは、それが含まれている一文の意味をつかむうえでも大変有益です。
さて、「畳語」、すなわち、語や語の一部をあえて繰り返すことにどのような意味があるのでしょうか。従来言われているのは次の3パターンです。
1 名詞の複数形
例 人々、国々、日々、我々、など
2 動作の継続あるいは反復
例 きらきら、ひらひら、転々、など
3 意味の強調
例 ますます、いちいち、たびたび、など
先に解いた問題に登場した畳語に目を通しても、上の1~3のどれかに相当することが理解できるでしょう。なお、2のように繰り返されることから3の強調の意が生じたと考えられます。3は連用修飾の役割のある副詞が多いのも特徴的です。
しかし、最近新たに登場した「畳語」に目を向けるとちょっと事情が変わってきます。
たとえば、「ほぼほぼ」という畳語はどうでしょうか。
「ほぼ」とは、「全部あるいは完全にというわけではないが、それに近い状態にあること」を意味するとされています。完全を1とすると、0.9くらいのイメージでしょうか。そう考えると、「ほぼほぼ」を上の3の「意味の強調」とすると、「0.9×0.9=0.81」となり、その値は小さくなるはずです。でも、果たしてそうなるでしょうか。次の2つの文を見比べてみましょう。
どちらがその「同意度」は高いでしょうか。後者の「ほぼほぼ」ですよね。先の数値を用いると、「ほぼ」の0.9が、「ほぼほぼ」で0.98くらいになりそうです。