ここまで厳格でも事件は起きる

イギリスでは教員に対して、これだけ厳しく、かつ頻繁に生徒への不適切な行為をしないよう戒めているのだから、懲戒処分になる教員は少ないだろうと思いきや、そういうわけでもない。

2012年にDBSチェックが教育関係者に導入されて以来、違法行為を報告された教員数は増加傾向にある。イギリスの構成国のひとつイングランドだけでも2022年には108人の教員が永久に教職を失った。そのうち35人が性的違法行為だった。常勤の教師数だけでも約47万人なので、この数字が多いか少ないかは個人の判断によると思うが、学校から永久追放された元教員は氏名や職歴、罪状によっては顔写真もが新聞やネット上で公開されているので、彼らが将来経歴をいつわるのは難しいだろう。日本では、「性犯罪者の個人情報を開示すると犯罪者の人権が守られないのでは」という議論があるのとは大きな違いだ。

また、イギリスでは政府がDBSチェックで該当する罪状を細かく定め、公開している。その数は約1000にのぼる。一方、日本では性犯罪の取り扱いが自治体ごとに定められた条例によって違うことがあるので、この点もイギリスでの罰則は首尾一貫している。

イギリスではかなり古い事件でも被害者が申し立てできるので、違法行為の報告数はさらに増えそうだ。例えばロンドンの某有名私立男子校では、有名な新聞社が2014年に過去に起きた虐待や性犯罪を指摘したことがきっかけで、その被害者が警察に陳述し数々の隠蔽いんぺいされていた犯罪が露見した。警察は複数の男性教員を1960年代から現在に至るまで調査、それぞれ懲役や教員永久追放などの刑を科した。過去に性的な暴力を振るった加害者が刑罰を受けず野放しになっているのを、現在のイギリス社会は許さないという態度がこの事例から読み取れる。

日本と外国ではその社会背景や教育制度が違うので、外国で機能しているルールが日本でそのまま奏功するとは限らないが、日本での学校問題の解決策を考える際、イギリス政府や学校の取り組みも参考にできるのではないだろうか。

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