手を出さなくても「わいせつ写真保持」でアウト

このリストに加えられた人とは、主に子どもの心や体に危害を加えた者を意味する。

具体的には、体罰や言葉の暴力、性的暴行などはもちろんのこと、子どものわいせつな写真を所持しているだけでもリストに加わる。

例えば数年前、地方の公立共学校の教員が、インターネットからダウンロードした少女のわいせつな写真を大量に保持していたことが発覚。生徒に直接手を出したわけではなかったので投獄実刑は免れたが、教壇に再び立つチャンスを永久に失った。「たったこれだけで教員が無期免職?」と思った方もいるのではないだろうか。

さらに、このリストに登録された者は大学の教職課程を受講することすらできない。イギリスには日本の教員免許にあたる制度はなく、大学で教職課程を取らなくても私立校の教員になれるが、教職課程を取っていた方が就職に有利である。このように教員になる前段階から、徹底した防止対策を行っているのだ。

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写真=iStock.com/M-Production
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筆者が体験したハロウスクールの採用面接

イギリスで教員に採用されるには、どのような審査が行われるのか。

私は2013年、商社勤務の配偶者の転勤でイギリスのロンドンに引っ越した。その数カ月後、私立中高一貫校のハロウスクールで日本語を教える非常勤講師の職の公募があった。私はそれまでに配偶者の駐在地であったタイとUAEにて現地の高校や大学で日本語を教えてきたので、今度はイギリスで教えてみたいと思い、出願した。

志望動機や経歴、自己紹介などを熱心に書いて送ると、約1カ月後に書類選考を通過したことを告げる手紙が届いた。その手紙には学校で模擬授業と面接がある旨が記載されていたが、「面接ではあなたの履歴書に書かれている資質が本当に備わっているのかを確かめるとともに、あなたが子どもの仕事に適性があるかどうかを審査する。その際、子どもの安全保護・福祉促進対策(safeguarding children and promoting their welfare)に関して問う」と書かれていた。

面接対策として、授業のやり方や今までの教師経験については必ず聞かれるだろうと予想していたので、それらは綿密に準備した。しかしイギリスで教育に関わるのがはじめての筆者にとって「子どもの安全保護」については、その意味もどう準備してよいかもわからないまま面接に臨んだ。