持続的に支えられる体制構築を

ただし、榊原のマンパワーに依存していたことは否めない。榊原が、2022年に兵庫医科大学に戻ると、途端に手術件数が減った。

この事態を受けて、榊原は2023年4月に千船病院に戻ってきた。現在、PSCをふたたび軌道に乗せるべく奮闘中だ。

千船病院広報誌『虹くじら 03号』
千船病院広報誌『虹くじら 03号』

単に元に戻すだけではない。2021年9月に榊原は、兵庫医科大学でカテーテルの修練を積み、カテーテル専門医の資格を取得した。

専門医になれば、詰まった血管にカテーテルを入れて血栓を除去する脳血栓回収療法を行える。脳血栓回収療法は、t-PAの適応外や投与後に効き目がなかった症例に適応できる。

榊原の目線はあくまで高い。

「カテーテル中心の時代になっても、自分はやはり手術が好き。個人的には、またどこかに国内留学して腫瘍の手術を学びたい。そのためには、私がいなくても千船病院脳神経外科が地域を持続的に支えられる体制をつくる必要があります。まずはそこに全力投球です」

榊原がふたたび去るときが、千船病院脳神経外科が真の意味で脳卒中に関して地域の基幹病院になるときなのだろう。

(取材・文=村上敬)
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