地域の医療機関や救急隊からの要請に対して、24時間365日脳卒中や脳卒中を疑う患者を受け入れる「一次脳卒中センター(PSC)」。このPSCで患者を診察する医師は精神的、肉体的に疲弊する。医師をサポートするスタッフも同様だ。チームをまとめ、叱咤激励できる「アクティブな医師」でないと務まらないという。過酷な現場を支える千船病院脳神経外科部長の榊原史啓さんの取り組みをリポートする――。

※本稿は、千船病院広報誌『虹くじら 03号』の一部を再編集したものです。

血管造影装置と千船病院脳神経外科部長の榊原史啓さん。
撮影=奥田真也
血管造影装置と千船病院脳神経外科部長の榊原史啓さん。

脳神経外科の手術は、まるでお祭り

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)を疑われる患者が運び込まれると救急に緊張が走る。時間との勝負だからだ。

まず優先するのは、採血である。

脳血管に詰まった血栓を溶かすt-PAという薬がある。点滴で投与すると、約3分の1の患者に効果がある。t-PAを投与できるのは脳梗塞発症後4時間半以内だ。救急に搬送されてから60分以内の投与開始を目指す必要がある。適応するかどうかの判断は血液検査による。結果が出るまで、30~40分。まず採血をしないと、その判断が遅れてしまう。

採血の後、放射線科でMRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピュータ断層)を撮影、脳で何が起きているのか調べる。

意識混濁の原因が脳の血管の詰まりではなく、破れたことならば、開頭手術がありうる。またt-PAで出血性の副作用が出た場合も手術だ。

手術が要るとわかればオペ室は準備に追われ、開頭が始まると緊張感は最高潮に達する。脳の柔らかさは木綿豆腐ほど。崩さないように細心の注意を払いながら、脳みそを分け、深部にある破れた血管を処理する。手術時間は4~5時間。終わればみんなグッタリだ。

「脳神経外科の手術は、まるでお祭り。みんなでわっしょいわっしょいとやって、嵐のように過ぎていく。メリハリのあるところが自分の性に合っています」

患者が運び込まれてからの怒涛の数時間をこのように表現したのは、千船病院脳神経外科部長の榊原史啓である。

千船病院は2021年4月、一次脳卒中センター(以下PSC)の認定を受けた。PSCは脳卒中患者を24時間365日受け入れて、t-PA静注療法などの急性期診療を行う。

新たにPSCの認定を受けるというミッションを掲げた千船病院の脳神経外科が、連携する兵庫医科大学病院から招いたのが榊原だった。