小2でボクシングを始めるも「将来の夢は薬剤師」

東京オリンピック女子ボクシング金メダリストの入江聖奈さん
撮影=中村治
東京オリンピック女子ボクシング金メダリストの入江聖奈さん

【武中】ボクシングを始めたのは小学校2年生のとき。きっかけはなんだったんですか?

【入江】小山ゆうさんの漫画『がんばれ元気』を読んでやりたいなって思ったんです。

【武中】とりだい病院の隣り、『シュガーナックルボクシングジム』に通われた。病院から中海沿い、湊山公園の小道を歩いていけば着きますね。

【入江】えっ、とりだい病院近いんですか! 私、地理に疎いもので……。

【武中】ボクシングを始めた頃から、やはり抜きんでていたんですか?

【入江】体格が良かったんです。(同年代の)男の子はまだ小っちゃいじゃないですか。体格の差を生かして、まあ、やっつけてましたね(笑)。

【武中】小学生のときの夢はプロボクサーだった?

【入江】(大きく首を振って)全然、興味なかったです。漠然とボクシングで世界チャンピオンになりたいという気持ちはありましたが、小学校の卒業式のときは、将来、薬剤師になりたいって言っていましたね。

【武中】薬剤師ですか? 誰か、身近に薬剤師の方がいらっしゃったんですか?

【入江】ONE PIECE』に出てくる(トニートニー・)チョッパーっていうキャラクターをご存じですか? トナカイから人間になったという設定で、薬草などを使って、仲間を治療するんです。私もそんな風になってみたいって思ったんです。

ただ、調べてみたら、薬剤師になるには大学の薬学部に進んで、6年間も勉強しなければならない。ちょっとそんなに長く勉強するのは無理だなと諦めました。

とはいえ、今、大学卒業後、大学院で学んでいるんですが(笑)。振り返ってみれば、理系科目は苦手だったにもかかわらず、ずっと憧れがありました。

鳥取県出身者初の金メダリスト

鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長
撮影=中村治
鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長

【武中】オリンピックを意識したのは小学6年生のときだったそうですね。

【入江】そのとき東京オリンピック開催が決まったんです。自分が大学2年生のときにオリンピックが開催されるんだなと思いました。とはいえ、はっきり道筋が見えたのは高校3年生ぐらいのときですかね。

【武中】米子西高校の2年、3年生のとき、全日本女子選手権を連覇しています。64年以来の日本開催の強化選手として期待もかかっていたでしょうね。ボクシングをやめようと思ったことはないんですか?

【入江】うーん、何回かはありましたね。高校のとき、人並みの青春をしてみたいって思うじゃないですか(笑)。取材でメディアの方を前にすると、将来の夢は東京オリンピックで金メダル目指しますって言わなきゃいけない雰囲気になるじゃないですか? そう言っていたので辞められない(笑)。

【武中】有言実行というのもありますよね。言うことで責任を持つ。

【入江】はい。口にしたことを後悔していないです。自分で追い込んだのが良かったのかもしれないです。

【武中】これまでオリンピックの女子ボクシング競技では金メダルは誰もいませんでした。大会前、金メダルを獲れるという自信はありましたか?

【入江】いえいえ(苦笑)。もちろん出るからには世界一を目指していましたが、組み合わせが発表になったとき、行けても銅メダルかなと思っていた冷静な自分もいました。

【武中】トーナメントで反対の“山”に台湾の林郁婷さんがいたからですね。彼女は2018年、19年と連続して世界選手権でメダルを獲得していた最強王者。ところが、その林さんが2回戦で敗れた。

【入江】そのときにワンチャン(ス)あるかなとは少し思いました。ただ、最後まで金メダルを獲れるという自信はなかったです。

【武中】入江さんは鳥取県出身者初の金メダリストでもあります。オリンピックのとき、米子はめちゃくちゃ盛り上がってました。急に友だちや親戚が増えたりしませんでしたか?

【入江】(米子に帰ると)みんなにこにこしてくれているという印象はありました。ただ、私、友だちが多い方ではないので、そこは変わらなかったかな。

【武中】こうして話していると人見知りするという感じはしないですね。

【入江】人見知りはないんですけれど……小学校のときは挨拶して話をすれば友だちでしたよね。でも大人になっていくと友だちのハードルが上がっていきませんか? 私、友だち、両手で収まるぐらいしかいないかも(笑)。