集中力を高めるにはどうすればいいのか。ソフトバンクの元社長室長で現在、東京大学特任研究員の安川新一郎さんは「座禅や瞑想を行うことで、心が落ち着き、集中力が増し、アイデアがひらめく。ソフトバンクグループの孫正義社長は会議と会議の間に、抹茶を飲んで坐禅をしたり散歩したりしながら、意識を集中させて考えをまとめていた」という――。

※本稿は、安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

記者会見するソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長=2022年11月11日、東京都港区
写真=時事通信フォト
記者会見するソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長=2022年11月11日、東京都港区

脳は睡眠中もボーッとしている時も活動している

前々回の記事でも触れましたが、私達の脳は、睡眠中もボーッとしている時も、デフォルトモードネットワーク(DMN/ワシントン大学医学部のマーカス・レイクル教授の研究により判明した脳の状態)が活発に活動しています。

DMNは外界ではなく自己の内部を対象として活動しています。自分の過去、性格、能力、感情や他人の考え、感情、そして将来への期待と不安等が対象です。例えば、私達が後ろ向きの気持ちでボーッとしていると、たくさんのマイナスの考えや負の感情が頭を巡り続ける時があります。

また、ボーッとシャワーを浴びている時に突然良いアイデアが浮かんだりします。

アイデアが浮かぶ場所として1000年前の中国の政治家・学者欧陽修おうようしゅうは馬上・枕上ちんじょう廁上しじょう(便所)の三上が良いとしました。馬上というのは、馬に乗って移りゆく景色を眺めている時。枕上は、布団に横になっている時。廁上は、トイレでリラックスしている時です。いずれも、何も考えていないようで、DMNが活動している時です。

瞑想と家事でDMNを落ち着かせひらめきを得る

このような良い面がある一方で、DMNが過剰に活発化すると、様々な雑念や思考がとりとめもなく出てきて止まらない、という状態になります。私もかつて経験した不眠症等もこれに含まれます。心の不安状態が長く続くと、神経伝達物質であるコルチゾールが出続け、脳に影響を与え、引きこもりやうつの症状を引き起こすことにもつながります。

瞑想めいそうを続けると、このDMNの活動を抑制しエネルギー消費を抑えながら集中できるという、瞑想とDMNの関係を分析した論文もあります。

とはいえ、日常生活のなかに瞑想を取り入れるのが難しいという人もいるかもしれませんので、同様の効果が得られるかもしれない方法を、ここで1つ紹介しましょう。

それは、「無心になって家事をする」ということです。