品川区にないのに「品川駅」なワケ

10月14日は「鉄道の日」です。新橋と横浜の間に日本で最初の鉄道が開通した1872(明治5)年9月12日(旧暦)が新暦では10月14日に当たることから、この日が「鉄道の日」になっています。2022年は鉄道開業150周年ということで、関連イベントが各地で開催されました。

鉄道開業の日は10月14日とされていますが、先に工事が完了していた品川と横浜の間で仮開業して運行を始めたのは、正式な開業より4カ月ほど前の1872年5月7日(旧暦。新暦では6月12日)のことでした。

鉄道が開通した当時、新橋駅は、今の汐留シオサイトのあたりにありました。また横浜駅は、現在は桜木町駅と名前を変えています。一方、品川駅は当時とほぼ変わらない場所にあり、名前も変わっていません。つまり品川駅は日本最古の駅といえるのです。

ところで、この品川駅の所在地が東京都品川区ではなく、東京都港区だということをご存じでしょうか。

品川駅の駅名の由来は東海道最初の宿場だった品川宿ですが、品川駅の所在地はこの品川宿より北になります。当初は品川宿に駅を設けることも考えられていたようですが、一説に駅ができると宿場が廃れるとの反対意見が強かったことなどから、今は港区である高輪になったといわれています。

ただ、品川という地名が著名だったことや、鉄道開設の計画時には高輪が当時あった「品川県」に含まれていたことなどから、駅名は「品川」となったようです。

JR品川駅
写真=iStock.com/MMassel
※写真はイメージです

バスタ新宿や新宿高島屋は渋谷区にある

品川駅というランドマークがあることで、駅周辺には品川プリンスホテルや品川税務署など、名称に「品川」を冠しているのに所在地は「港区」という校閲記者泣かせの施設も多く、「品川」と名前のつくものの所在地を丁寧に確認することが必須です。

品川駅のように駅名に自治体名を使っていても、所在地がその駅名と異なる自治体になっている駅は意外と多く、目黒駅(東京都品川区)、南新宿駅(東京都渋谷区)、下板橋駅(東京都豊島区)、厚木駅(神奈川県海老名市)、四条畷駅(大阪府大東市)などがあります。

またJR新宿駅は、所在地は東京都新宿区ですが、駅構内は新宿区と渋谷区にまたがっています。新宿駅南口のあたりは渋谷区に含まれ、南口側にあるバスタ新宿や新宿高島屋の所在地は渋谷区千駄ケ谷になります。このように「新宿」も校閲する際は要注意の地名です。

このような駅や周辺施設の所在地は、鉄道職員が一つ一つ指さし確認をして事故防止に努めているのに倣い、校閲記者も一つ一つ丁寧に確認して校閲の事故を防ぎたいものです。

(2022年10月30日 新野信)