作業時間は1~2時間、5~10分単位で見積もる

多くの人は「締め切り」については意識しますが、なぜか「作業時間」については考えません。

「作業時間の見積もりくらいやっているよ」と思う方もいるでしょう。

しかし、実際のところ、「この作業はだいたい1日かかる」「企画書は1週間くらいあればできるだろう」のような見積もりになっている方が多いように思います。

この感覚的で、おおまかな時間見積もりをもとにスケジュールを立ててはいけません。仕事の質とスピードを上げるためには、「粗い作業見積もり」は禁じ手です。

人の集中力は、90分と言われます。長く見積もってもせいぜい数時間でしょう。長時間集中し続けて、高い質の思考と作業をやり続けるのは、かなり難しいことです。

一方、「この仕事は3日かかる」というふうにざっくり見積もると、そこには、実際の作業時間のほかにも、さまざまなものが含まれてしまいます。

休憩時間、食事の時間、睡眠時間、ちょっと気分転換をする時間、スマホを見る時間、など、仕事と関係のないものがたくさん入ってきます。

もちろん、「締め切り」は3日後、5日後などに設定されていてもかまいません。しかし、作業時間は細かい作業単位で、長くても1~2時間程度、短ければ5~10分単位で見積もるべきです。

机の上の目覚まし時計とバックグラウンドで計算するビジネスウーマンをぼかして税金の支払いのための締め切りカレンダー
写真=iStock.com/Doucefleur
※写真はイメージです

作業時間の見積もりは繰り返すと精度も上がる

ひとつ例を挙げましょう。たとえば、先ほどの課題ヒアリングにおける、最初の「先方の業界・業種について調べ、その特徴や昨今の動向を理解する」について考えてみます。

具体的な作業内容と、その所要時間の見積もりは、

――業界・業種について、インターネット検索をして、手書きのメモを取る:30分
――手書きのメモをもとに「特徴」「概況」をまとめる:20分
――そこまでに調べた内容で、昨今の動向や、将来の動きなどがわかるか考える:5分
――足りない情報があれば、それについて、インターネットで調べる:30分
――十分な情報があれば、動向をまとめる:15分

〈1時間10分(追加調査なし)~1時間40分〉

追加オプション:インターネットだけでは情報が足りない場合

――書籍を探してオンラインで購入する:20分
――届いた書籍を読み込む:2時間
――書籍の内容をもとに、特徴、概況、動向に情報を追加する:30分

〈2時間50分〉

こんな具合に考えてみることができます。

「ここまで細かく設定しなきゃいけないの?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、ぜひトライしていただきたいと思います。

最初は面倒かもしれませんが、何度か繰り返すうちに、コツも掴め、作業時間の見積もりの精度も上がります。

ここに書いた作業は、最短1時間10分。インターネットを使った追加調査をするなら1時間40分です。

一般的に、一日の労働時間は8時間ですから、この日は、残り6~7時間は別のことに時間を使えることになります(書籍を買う場合も、当日の業務時間に受け取ることはできないため、この日は「書籍探し+オンライン注文」の20分だけです。もちろん、電子書籍であれば、その日のうちに読むこともできます)。