追体験の効果

カリブ海にあるオールインクルーシブ・リゾートでリラックスした1週間の旅、ローマでの刺激的な美術館や史跡巡りの旅、「ヨセミテ国立公園」へのハイキング旅行など、素敵な旅行をした、と想像してください。今度は、あなたが新車、高級腕時計、毛皮のコートなど、所持品に大金を使ったことを想像してください。

どちらの支出のほうが他の人と共有する可能性が高いでしょうか?

予想がつくと思いますが、私たちは、所持品にお金をつかったことよりも、体験したことを他の人に話す場合の方がはるかに多いのです。さらに、体験について話すことで、元の出来事に対する楽しみが増します25※。

私たちは、自分の旅を人に語るのが大好きです。語ることで、その体験を心の中で追体験しているからです。このように、体験は振り返ることができるというポイントは、その出来事を価値あるものにします。

高額の所持品を同じように購入した場合、その話を他人とするのはあまり楽しいことではありません。最初のうちは、新車を買ったことをちらっと話すかもしれませんが、購入したときのことや運転した経験を他人に話し続けることはまずないだろうと思います。

この研究の著者であるアミット・クマールは「モノはどうしても慣れることで『消えていく』のです。かつて愛用したウォークマンは、今では時代遅れです。ところが、体験は、

映画『カサブランカ』で、ハンフリー・ボガート(訳注:映画俳優)がイングリッド・バーグマン(訳注:映画俳優)に『僕たちには一緒に過ごしたパリの思い出があるさ』と語ったように、記憶や物語の中で生き続けます」と述べています。